「IPOに当たれば一発で儲かる」
そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。
たしかに、上場初日に株価が急騰する銘柄もあり、
過去には初値で数倍になるケースもありました。
しかしその裏側には、当選確率の低さや短期的な値動きリスクがあるのも事実です。
私自身も社会人になって間もない頃、
「IPOなら安全に利益が出る」と思い応募を繰り返しました。
ですが、現実は想像以上にシビアでした。
当たらない上に、当たってもタイミングを誤れば利益どころか損失になることも。
IPO投資は決してギャンブルではありません。
しかし、「短期で儲ける手段」ではなく、
“長期で成長企業を取り込む戦略”として考える必要があります。
この記事では、
- IPO投資の基本構造とリスク
- 短期売買に潜む落とし穴
- 長期で資産を積み上げるための考え方
を、実体験を交えながら解説していきます。
IPO投資とは?仕組みと当選までの流れを整理
IPO(Initial Public Offering)とは、
企業が証券取引所に新しく株式を上場し、一般の投資家がその株を購入できるようにすることを指します。
日本語では「新規公開株」と呼ばれます。
IPO投資の基本構造
企業が上場する際、まずは証券会社を通じて「公募価格」を決定します。
その価格で新規株を購入できるのがIPO投資です。
多くの場合、公募価格は市場での初値より低く設定されるため、
当選すれば初日で利益が出るケースも少なくありません。
これが「IPO=儲かる」と言われる理由です。
しかし実際には、すべてのIPOが上昇するわけではありません。
市場環境や企業業績によっては、初値が公募価格を下回ることもあります。
当選までの流れ
- 証券会社でIPOの取扱銘柄を確認
SBI証券・楽天証券・マネックス証券など、各社で取扱銘柄が異なります。 - ブックビルディング(需要申告)に参加
「いくらで・何株ほしいか」を申し込みます。 - 抽選・当選発表
証券会社による抽選で当選者が決定されます。 - 購入手続き・上場(初値形成)
当選後、購入手続きを行い、上場日に市場で取引が始まります。
このように、IPO投資は「当選→初値売却→利益確定」というシンプルな流れですが、
実際は当選確率が低く、継続的な応募が必要になります。
たとえばSBI証券のデータでは、人気銘柄の当選確率は 0.1%未満 の場合も。
「応募を続ける根気」が求められる投資法なのです。
短期で儲かる印象の落とし穴──“当たった後”に待っているリスク
IPO投資というと、「当選すれば利益が出る」というイメージが根強くあります。
たしかに、上場初日に初値が上がる銘柄も多く、短期間で数万円〜数十万円の利益が出るケースもあります。
しかし、その裏にはいくつもの見えにくいリスクが存在します。
① 「初値が必ず上がる」とは限らない
IPOの人気が高まるほど、割高な公募価格が設定される傾向があります。
その結果、上場初日には“期待先行で買われすぎた反動”が起き、
初値が公募価格を下回る「公募割れ」になることも珍しくありません。
たとえば、2023〜2024年のデータでは、
新規上場した約90社のうち 約3割が初値でマイナス。
話題性だけで応募した投資家が損を抱えるケースも多く見られました。
② 当選しても“売るタイミング”を誤ると利益が消える
IPO投資で利益を出すには、売却の判断が極めて重要です。
私が初めて当選したIPO(IT系スタートアップ)では、
上場初日の午前に一時的に+40%上昇しました。
しかし「まだ上がるかも」と思って売らずにいたところ、
午後には急落し、最終的には公募価格ギリギリの利益しか得られませんでした。
短期的な値動きに惑わされると、
“利益を守るどころか、逃す”こともあるのです。
③ 長期で持つ場合の「成長リスク」
IPOは“これから成長する企業”に投資できる魅力があります。
しかし、成長までの道のりが想定以上に長いことも多いのが現実です。
上場後しばらくは赤字が続く企業も多く、
決算ごとに株価が大きく変動します。
一時的に下落しても「信じて持ち続ける」姿勢が必要ですが、
心理的な負担も大きいのが実情です。
④ 「当たらない」ことも最大のリスク
IPO投資のもう一つの特徴は、当選しないリスクです。
どれだけ分析しても、抽選で外れれば購入すらできません。
そのため、IPO一本に絞ると“チャンスのない期間”が長くなりがちです。
結果として、「待っている間に機会損失が発生する」こともあるのです。
IPO投資は「夢のある投資」ですが、
短期での利益を狙うほど、運やタイミングの影響を強く受けます。
だからこそ次に解説するように、“長期での積み上げ型投資”として取り入れる発想が大切になります。
長期で積み上げるという選択──“成長企業を取り込む”発想へ
IPO投資を続けていると、
「運良く当たってもすぐ売るべきか、それとも長期で持つべきか」
という迷いに必ず直面します。
結論から言えば、長期で成長企業を取り込む発想こそが、
IPOを資産形成に活かす最も安定した方法です。
① 上場=“スタートライン”である
IPOは「ゴール」ではなく、「企業の出発点」です。
上場直後の株価は、話題性や期待で動きやすく、
その企業の“本来の実力”を反映していないことも多いもの。
一方、数年かけて業績を伸ばしていく企業も多く、
初値で手放してしまうと、その長期成長の恩恵を逃す可能性があります。
たとえば、上場時に話題になった企業の中には、
数年後に時価総額が数倍に成長したケースも少なくありません。
IPOを「一時的な利益」ではなく「将来の成長を取り込む入口」と捉えると、
投資の見え方が大きく変わります。
② “短期売買型”と“長期育成型”を分けて考える
IPO投資には、2つのアプローチがあります。
| タイプ | 特徴 | メリット | リスク |
|---|---|---|---|
| 短期売買型 | 初値で売却し利益を確定 | 即金性が高い | 需給に左右されやすい |
| 長期育成型 | 成長を待ちながら保有 | 複利効果・企業成長の恩恵 | 一時的な下落リスク |
どちらが正しいというわけではありませんが、
長期運用を前提としたポートフォリオにおいては、
“育成型IPO”を少額で取り入れるのが現実的です。
一部の当選銘柄を長期保有することで、
ポートフォリオ全体に“新興企業の成長エッセンス”を加えることができます。
③ 「IPO×インデックス」でリスク分散を強化
IPOは個別株の要素が強く、
値動きが激しいため、インデックス投資と組み合わせるのがおすすめです。
具体的には、
- 基本軸:つみたてNISAでS&P500やオルカン(世界株)
- サブ軸:IPO当選株を少額保有し、企業成長の恩恵を狙う
という構成です。
これにより、リスクを抑えながら「攻め」と「守り」の両立が可能になります。
私自身もこの方法に切り替えてから、
IPO投資の結果に一喜一憂することがなくなりました。
“勝つ投資”より、“続けられる投資”を選ぶ。
これが、長期で積み上げる最大のコツです。
まとめ──IPOは「運」ではなく「戦略」
IPO投資には、確かに“運の要素”があります。
しかし、当選だけに頼るのではなく、
「戦略的に取り組む姿勢」こそが長期で結果を残す鍵です。
① IPOは「短期のチャンス」ではなく「長期の入口」
IPOは、
「一発で儲ける」ための手段ではなく、
新しい成長企業に早期から関われる投資の入口です。
初値の上下に一喜一憂するよりも、
「この企業が10年後どうなるか」という視点を持つことで、
IPO投資はより有意義なものになります。
② 小さく始めて、長く続ける
IPO投資は、当選確率が低くリスクもある分、
資金を分散させながら“長く続ける”ことが大切です。
具体的には、
- 複数の証券会社に口座を開設(当選確率アップ)
- 抽選に毎回参加して「応募の習慣化」
- 当選した銘柄の一部は長期保有して成長を待つ
この3つを意識するだけで、IPO投資の成果は安定します。
「当たらないからやめる」ではなく、
“続けていればチャンスが回ってくる”という感覚で向き合うのがコツです。
③ IPO投資は“資産形成のスパイス”
IPOだけに頼らず、
インデックス投資・NISA・積立投資などの「ベース資産」に加えることで、
全体のリターンを押し上げる“スパイス”として機能します。
投資の世界に「絶対安全」はありませんが、
“分散”と“継続”を意識すれば、
リスクを抑えながらチャンスを取り込むことができます。
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📚 参考サイト
- 日本取引所グループ(JPX)|「IPOとは」
https://www.jpx.co.jp/ - 日本経済新聞|「IPO投資の実態とリスク」
https://www.nikkei.com/ - モーニングスター|「新規公開株(IPO)の基礎知識」
https://www.morningstar.co.jp/

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