はじめに
「インド株って将来有望らしいけど、今から買っても遅くない?」 「オルカンだけじゃインドの成長は取り込めない?」
そんな疑問を持つ人が増えている。
「インド株が熱い」という話を、投資系のメディアやSNSで見かける機会が増えた。
人口世界一、GDP成長率は6%台、2027年には日本を抜いて世界第3位の経済大国になるという予測もある。こうした話を聞くと、「今のうちに買っておくべきなのでは?」と思う人も多いだろう。
ただ、新興国投資には独自のリスクがある。「成長している国=儲かる」とは限らないことは、過去の中国株投資で痛感した人も少なくないはずだ。
この記事では、インド株に興味を持ち始めた投資初心者や、すでにS&P500やオルカンを積み立てている人に向けて、インド株の魅力とリスクを整理し、私自身がどう判断しているかを正直に書いていく。
この記事の結論
- インド株は人口ボーナスと高い経済成長率を背景に、長期的な成長が期待できる投資先である
- ただし、信託報酬の高さ、為替リスク、政治リスクなど新興国特有の注意点がある
- オルカンにもインドは含まれており、別で買うかどうかは「どこまでインドに期待するか」次第
インド株が注目される理由
結論から言うと、インドが注目される最大の理由は「人口ボーナス期」と「高い経済成長率」の2つだ。
人口世界一、しかも若い
2023年、インドは中国を抜いて世界最大の人口を持つ国になった。約14億人という規模だけでなく、人口構成が特徴的だ。人口の中央値は約28歳と非常に若く、労働人口が今後数十年にわたって増え続ける構造になっている。
「働く世代がその他の世代の2倍以上」になる状態を人口ボーナス期と呼ぶ。日本はすでにこの時期を終えているが、インドはまさに人口ボーナス期の真っ只中にある。豊富な労働力は消費を拡大させ、経済成長のエンジンになる。
GDP成長率は主要国トップクラス
インドの実質GDP成長率は2024年度で約6.5%、2025年度も同程度が見込まれている。これは米国や日本の数倍のペースだ。
IMFの予測では、2027年にはインドのGDPが日本を抜いて世界第3位になるとされている。さらに長期では、2060年には米国を抜いて世界第2位の経済規模に達するという見通しもある。
グローバル企業の製造拠点としての存在感
Apple、Google、Teslaといったグローバル企業がインドへの投資を拡大している。iPhoneの製造拠点がインドに移りつつあり、2025年には米国向けスマートフォンの4割以上がインド製になったというデータもある。
インド政府も製造業を後押しする政策を打ち出しており、「世界の工場」としての地位を固めつつある。
インド株に投資する方法
結論から言うと、日本の個人投資家がインド株に投資するなら、投資信託を使うのが現実的だ。
インドの個別株を直接買うことは制度上難しく、仮にできたとしても情報収集のハードルが高い。投資信託であれば、少額から分散投資ができ、積立にも対応している。
主なインド株投資信託の比較
| ファンド名 | 信託報酬(税込) | 連動指数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| SBI・フランクリン・テンプルトン・インド株式インデックス・ファンド | 約0.2538% | FTSE India 30/18 Capped | 2024年10月設定、最安水準 |
| auAM Nifty50インド株インデックス | 0.297% | Nifty50 | 信託報酬引下げ実績あり |
| 楽天・インド株Nifty50インデックス・ファンド | 0.308% | Nifty50 | 楽天証券で購入可 |
| SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(サクっとインド株式) | 約0.3138% | S&P BSE SENSEX | SBI証券で購入可 |
| iFreeNEXT インド株インデックス | 0.473% | Nifty50 | 純資産総額が大きい |
※信託報酬は投資先ETFの経費率を含む実質コスト。2025年12月時点の情報であり、変更される可能性があります。
指数の違いを簡単に整理
インド株の代表的な指数は3つある。
- Nifty50:インドのナショナル証券取引所に上場する大型株50銘柄で構成
- S&P BSE SENSEX:ボンベイ証券取引所の大型株30銘柄で構成
- FTSE India 30/18 Capped:大型・中型株約230銘柄で構成
銘柄数が多いFTSEの方が分散されているが、どの指数もインド経済全体の成長を反映する点では大きな違いはない。コストを重視するなら、信託報酬で選ぶのが合理的だ。
インド株は買うべきか?私が慎重になる理由
結論から言うと、インド株には「成長期待」だけでは語れないリスクが複数ある。
信託報酬はS&P500の数倍
S&P500のインデックスファンドは信託報酬が0.09%台のものもある。一方、インド株は最安でも0.25%程度と、2〜3倍のコストがかかる。
長期投資では信託報酬の差が複利で効いてくる。コストの差は無視できない。
関連記事:信託報酬0.1%の差が30年後に生む”見えない損失”
為替リスク(インドルピー)
インド株に投資するということは、インドルピーに投資することでもある。円高ルピー安が進めば、株価が上がっても円換算でのリターンは目減りする。
新興国通貨は先進国通貨に比べてボラティリティが高い。為替の動きは予測が難しく、長期投資ではリスク要因として認識しておく必要がある。
関連記事:「為替ヘッジあり/なし」どっちを選ぶ?円安・円高局面でのリスクとリターン
政治リスク
インドのモディ首相は2014年から長期政権を維持しており、外資誘致や製造業振興などの成長政策を推進してきた。ただし、2029年の選挙では後継問題が浮上する可能性がある。
政権交代によって政策が変わり、外国人投資家への規制が強化されるリスクはゼロではない。新興国投資では、政治的な安定性も重要な判断材料になる。
「成長する国=株が上がる」とは限らない
中国は過去20年で世界第2位の経済大国に成長したが、中国株のリターンは期待ほどではなかった。経済成長と株式リターンは必ずしも連動しない。
企業統治の問題、政府による規制、外国人投資家への制限など、新興国には先進国にはないリスクがある。「GDPが伸びているから買い」という単純な判断は危険だ。
オルカンに含まれるインド──それでも別で買う意味はあるか
結論から言うと、オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)にもインドは含まれている。ただし、その比率は約2%程度だ。
100万円のオルカンを持っていても、インドへの投資額は2万円に満たない。「インドの成長を取り込みたい」という目的には、少し物足りないと感じる人もいるだろう。
オルカンの特徴を思い出す
オルカンは時価総額加重平均で世界中の株式に投資する。成長した国の比率は自動的に上がり、低迷した国の比率は下がる。
つまり、インドが今後成長すれば、オルカン内のインド比率も自然と上昇していく。「自分で判断したくない」「市場に任せたい」という人は、オルカンだけで十分かもしれない。
別で買う意味があるケース
一方、「インドの成長をもっと取り込みたい」「自分の判断でインド比率を高めたい」という人は、オルカンとは別にインド株ファンドを持つ選択肢もある。
ただし、その場合は以下の点を意識したい。
- ポートフォリオ全体に占めるインドの比率を決めておく
- コストの高さを許容できるか確認する
- 新興国リスクを理解した上で投資する
特定の国やセクターに集中することはリスクを高める。インド株も同様だ。
関連記事:FANG+やS&P500トップ10が人気でも、私が選ばない理由
インド株は確かに魅力的な成長ストーリーを持っている。しかし、コストやリスクを考えると、ポートフォリオの主軸にするには不安が残る。オルカンやS&P500を中心に据えた上で、スパイス程度に加えるのが現実的な選択肢だろう。
私の結論
私自身は、インド株を「ポイント投資でたまに買う程度」にしている。
メインの積立はS&P500、NASDAQ100、TOPIXで、これは変えていない。インドの成長には期待しているが、信託報酬の高さと新興国リスクを考えると、コアに据えるほどの確信は持てていない。
買うときはSBI・フランクリン・テンプルトン・インド株式インデックス・ファンドを選んでいる。理由は単純で、信託報酬が最も安いからだ。長期投資ではコストが重要だと考えているので、同じインド株に投資するなら低コストのものを選びたい。
楽天証券とSBI証券を併用しているので、ポイントが貯まったときに気分で買う程度。正直、ポートフォリオ全体への影響はほとんどない。
インド株は「買うべきか」よりも「どのくらいの比率で持つか」「どの程度のリスクを取れるか」で判断すべきだと思う。成長期待だけで飛びつくのではなく、自分の投資方針と照らし合わせて決めるのが大事だ。
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免責事項
本記事は筆者の個人的な見解であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資信託の信託報酬やサービス内容は変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。
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