はじめに
「米国株は割高だ」
投資関連のニュースや記事で、こんなフレーズを目にしたことはないだろうか。でも、「割高」とは何を基準に言っているのか、説明できる人は意外と少ない。
その根拠としてよく使われるのが「PER(株価収益率)」という指標だ。PERを理解すれば、割高・割安の議論についていけるようになるし、自分なりの判断もできるようになる。
この記事では、PERの基本的な仕組みから、今の米国株は本当に割高なのかを数字で考えていく。
この記事の結論
- PERとは「株価が1株あたり利益の何倍か」を表す指標で、割高・割安を判断する目安になる
- 2026年1月現在、S&P500のPERは約22〜23倍で、過去平均(約18倍)と比べると高い水準にある
- ただし、PERが高い=即割高とは限らない。成長期待や金利環境も考慮する必要がある
PERとは何か
結論から言うと、PERとは「株価が1株あたり利益(EPS)の何倍になっているか」を表す指標です。
計算式
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)
たとえば、株価が3,000円で、1株あたり利益(EPS)が200円の企業があるとします。
PER = 3,000円 ÷ 200円 = 15倍
この場合、「株価は利益の15倍」ということになります。
PERが意味すること
PERは「投資した金額を、その企業の利益で何年で回収できるか」という見方もできます。
PERが15倍なら、今の利益水準が続けば15年で投資額を回収できる計算です。PERが30倍なら30年かかる。
つまり、PERが低いほど「利益に対して株価が割安」、PERが高いほど「利益に対して株価が割高」と解釈できます。
具体例で理解する
同じ業種のA社とB社を比較してみましょう。
| 企業 | 株価 | EPS | PER |
|---|---|---|---|
| A社 | 3,000円 | 200円 | 15倍 |
| B社 | 3,000円 | 100円 | 30倍 |
株価は同じ3,000円ですが、A社はPER15倍、B社はPER30倍です。利益に対する株価という観点では、A社の方が「割安」と言えます。
ただし、これはあくまで一つの見方です。B社のPERが高い理由が「将来の成長期待」にあるなら、必ずしも割高とは言えません。
PERの目安と見方
結論から言うと、PERには「絶対的な正解」はありませんが、一般的な目安は存在します。
一般的な目安
| PER | 一般的な評価 |
|---|---|
| 10倍以下 | 割安と見られることが多い |
| 15倍前後 | 平均的な水準 |
| 20倍以上 | やや割高と見られることが多い |
| 30倍以上 | 高い成長期待が織り込まれている |
※あくまで目安であり、業種や市場環境によって大きく異なります。
高PER=割高、低PER=割安とは限らない
ここが重要なポイントです。
PERが高い企業は「割高」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。なぜなら、PERには「将来の成長期待」が織り込まれているからです。
たとえば、急成長中のテック企業は、現在の利益は小さくても、将来の利益成長が期待されるため、PERが高くなりがちです。逆に、成熟産業の企業は、安定した利益を出していてもPERが低くなることがあります。
同様に、PERが低い企業が「お買い得」とも限りません。業績悪化や将来性への懸念から、株価が売られてPERが下がっているケースもあります。
PERはあくまで「現在の利益に対する株価の水準」を示す指標であり、それだけで投資判断をするのは危険です。
PERが高い・低い理由
結論から言うと、PERの水準は「成長期待」と「リスク認識」によって決まります。
PERが高くなる理由
- 高い成長期待:将来の利益が大きく伸びると予想されている
- 安定した事業:景気変動の影響を受けにくく、利益が安定している
- 低金利環境:金利が低いと、株式の相対的な魅力が増す
- 人気セクター:テクノロジーなど、注目度の高い業種
PERが低くなる理由
- 低い成長期待:利益の伸びが見込めない、または減少が予想されている
- 業績への不安:一時的な要因で利益が膨らんでいる可能性
- 高リスク:業界全体の先行きが不透明
- 不人気セクター:投資家の関心が低い業種
NVIDIAのようなAI関連企業のPERが高いのは、「AIブームで今後も利益が大きく伸びる」という成長期待が織り込まれているからです。
今の米国株は本当に割高なのか
結論から言うと、過去平均と比較すると「やや割高」な水準にあります。ただし、それが即座に「売り」を意味するわけではありません。
S&P500の現在のPER
2026年1月時点で、S&P500の予想PER(12ヶ月先ベース)は約22〜23倍です。
| 期間 | S&P500のPER |
|---|---|
| 2026年1月時点 | 約22〜23倍 |
| 過去5年平均 | 約20倍 |
| 過去10年平均 | 約18倍 |
| 1985年以降の平均 | 約16倍 |
過去の平均と比較すると、現在のS&P500は「歴史的に見て高い水準」にあることがわかります。
主要指数のPER比較
S&P500だけでなく、他の主要指数と比較してみましょう。
| 指数 | PER(2026年1月) | 特徴 |
|---|---|---|
| S&P500 | 約22〜23倍 | 米国大型株500社 |
| NASDAQ100 | 約28倍 | テック中心100社 |
| TOPIX | 約14〜16倍 | 日本株全体 |
NASDAQ100はテクノロジー企業が中心のため、S&P500よりも高いPERになっています。一方、TOPIXは米国株と比べて低い水準です。
「日本株は割安、米国株は割高」と言われることがありますが、これはPERの違いを指していることが多いです。
関連記事:NASDAQ100とは?S&P500との違いと、私が積立に加えた理由
「割高でも成長が続けば正当化される」という視点
PERが高い=即座に暴落する、というわけではありません。
株価は「EPS × PER」で決まります。つまり、EPSが成長すれば、PERが一定でも株価は上がります。逆に、EPSが大きく成長すれば、株価が上がってもPERは下がることもあります。
S&P500構成企業の2026年・2027年のEPS成長率は、それぞれ10%前後の増益が予想されています。この成長が実現すれば、現在の高いPERも正当化される可能性があります。
一方で、成長期待が裏切られれば、株価は大きく調整するリスクもあります。これが「割高」を警戒する声の背景です。
マグニフィセント・セブンの影響
現在のS&P500のPERが高い理由の一つに、「マグニフィセント・セブン(M7)」の存在があります。
Apple、Microsoft、Amazon、NVIDIA、Alphabet、Meta、Teslaの7社は、S&P500の時価総額の約30%以上を占めています。これらの企業は高い成長期待からPERも高く、指数全体のPERを押し上げています。
つまり、「S&P500のPERが高い」と言っても、一部の大型テック企業が牽引している側面があり、すべての企業が割高というわけではありません。
PERの限界・注意点
結論から言うと、PERは便利な指標ですが、万能ではありません。いくつかの限界を理解しておく必要があります。
赤字企業には使えない
PERは「株価÷EPS」で計算するため、EPSがマイナス(赤字)の企業には使えません。成長段階のスタートアップや、一時的に赤字に転落した企業のPERは計算できない、または意味をなさなくなります。
予想PERと実績PERの違い
PERには「予想PER」と「実績PER」の2種類があります。
- 予想PER:将来の予想EPSを使って計算。市場が織り込む成長期待を反映
- 実績PER:過去の実績EPSを使って計算。確定した数字だが、過去の情報
一般的に、投資判断には予想PERが使われることが多いですが、予想は外れることもあります。
一時的な利益変動に注意
EPSが一時的な要因で膨らんでいる(または減少している)場合、PERは実態を反映しません。
たとえば、資産売却で一時的に利益が増えた企業は、PERが低く見えます。しかし、翌年以降はその利益がなくなるため、実態より割安に見えてしまいます。
業種によって適正水準が異なる
テクノロジー企業と銀行、小売業では、適正なPERの水準が異なります。成長性の高い業種はPERが高く、成熟した業種はPERが低い傾向があります。
異なる業種の企業をPERだけで比較するのは適切ではありません。
PERだけで判断しない
PERはあくまで「一つの指標」です。投資判断には、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、配当利回り、売上成長率など、複数の指標を組み合わせて見ることが重要です。
インデックス投資家はPERをどう見るべきか
結論から言うと、長期のインデックス投資家は、PERを「過度に気にしすぎない」ことが大切です。
長期投資なら過度に気にしすぎない
S&P500やオルカンに長期で積立投資している場合、短期的なPERの変動に一喜一憂する必要はありません。
過去を振り返ると、「PERが高い」と言われていた時期に投資を始めても、20年、30年という長期で見れば、株式は債券や預金を上回るリターンをもたらしてきました。
市場のタイミングを計ることは、プロの投資家でも難しいとされています。「今は割高だから投資を控える」という判断が、結果的に機会損失につながることもあります。
関連記事:投資しないことは本当に「安全」なのか──20代投資家が考えるインフレと機会損失のリスク
ただし「今どの水準か」は知っておく価値がある
とはいえ、「今の市場がどの水準にあるか」を知っておくことには意味があります。
PERが歴史的に高い水準にあるなら、短期的には調整(下落)のリスクがあることを認識しておく。それによって、暴落時にパニックにならず、冷静に積立を続けられるようになります。
「知らないから不安」ではなく、「知った上で、それでも長期投資を続ける」という姿勢が大切です。
関連記事:暴落はギフト──積立投資が市場下落で勝てる科学的理由
まとめ

PERは、株価が利益の何倍かを示す指標であり、割高・割安を判断する目安になります。
2026年1月現在、S&P500のPERは約22〜23倍と、過去平均(約16〜18倍)と比べて高い水準にあります。「米国株は割高」という声には、この数字が根拠になっていることが多いです。
ただし、PERが高い=即座に売るべき、ではありません。成長期待が実現すれば、高いPERも正当化されます。逆に、PERが低くても、業績悪化が続けば株価は下がります。
長期のインデックス投資家にとっては、PERを「参考程度に見ておく」スタンスが適切だと私は考えています。市場のタイミングを計るよりも、淡々と積立を続ける方が、結果的に良い成果につながることが多いからです。
PERという指標を理解した上で、自分なりの投資判断をしていきましょう。
関連記事:S&P500とオルカンどっちがいい?20代投資家が実践する”正解のない選び方”
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。PERの水準や株価は常に変動しており、本記事に記載された数値は執筆時点のものです。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
関連記事
- NASDAQ100とは?S&P500との違いと、私が積立に加えた理由
- S&P500とオルカンどっちがいい?20代投資家が実践する”正解のない選び方”
- 暴落はギフト──積立投資が市場下落で勝てる科学的理由
- 投資しないことは本当に「安全」なのか──20代投資家が考えるインフレと機会損失のリスク
- インデックス投資の魅力|初心者が安心して資産を育てられる理由
- 20代から始める資産運用|FIREを目指す私の投資方針と実体験
- FANG+やメガ10が人気でも、私が選ばない理由

コメント