はじめに
投資を始めた頃、私は毎日チャートを見ていました。
「今月は米国株が強そうだ」「来月は新興国に移そう」「やっぱり全世界株式にしておくべきか」
積立銘柄を、頻繁に入れ替えていました。市場の動きを予想して、少しでも良いパフォーマンスを狙うために。
でも、1年後に気づきました。
何もせず、最初に選んだ1つの銘柄をただ持ち続けた方が、パフォーマンスが良かったのです。
この記事では、「予想すること」がなぜ長期投資では不利になるのか、そして「予想しない投資」の方が有利な理由を整理します。
私自身の失敗と、そこから学んだことをお伝えします。
この記事で分かること
- 「予想する人」がハマる罠
- なぜプロでも予想は外れるのか
- 「何もしない」ことの威力
- 予想をやめることで得られるメリット
投資を始めた頃の「予想癖」
毎日チャートを見ていた
投資を始めたばかりの頃、私は毎日チャートを見る習慣がありました。
仕事の休憩時間、通勤中、寝る前。スマホで株価をチェックして、「上がった」「下がった」と一喜一憂していました。
そして、チャートを見るたびに「予想」をしていました。
「このチャートの形は、そろそろ上がる兆候だ」「ニュースを見る限り、来月は下がりそうだ」
こうした予想を基に、積立銘柄を入れ替えていたのです。
「今月はこっち、来月はあっち」と積立銘柄を入れ替えていた
具体的には、こんな感じでした。
1月:S&P500が好調だから、米国株インデックスに積立 2月:新興国が上がり始めたから、新興国株式に変更 3月:やっぱり分散が大事だと思い、全世界株式に変更 4月:米国株が再び強いから、またS&P500に戻す
毎月のように、積立銘柄を入れ替えていました。
「今月はどれが一番伸びるか」を予想して、最適な選択をしようとしていたのです。
結果的に、何もせず1つの銘柄を持ち続けた方がパフォーマンスが良かった
1年後、ふと気づきました。
友人は、投資を始めた時に選んだインデックスファンドの組み合わせを、ずっと持ち続けていました。何も考えず、毎月同じ銘柄に積立を続けていただけです。
私と友人のパフォーマンスを比較してみると、友人の方が良かったのです。
私が頻繁に銘柄を入れ替えた結果、上昇局面を逃したり、手数料がかさんだり、タイミングが悪かったりして、結局パフォーマンスは伸びませんでした。
この時、衝撃を受けました。「予想は意味がなかった」と。
「予想する人」がハマる3つの罠
罠1:銘柄を頻繁に入れ替えてしまう
予想する人が最初にハマるのが、「銘柄の頻繁な入れ替え」です。
「今はこっちが強い」「次はあっちが来る」と考えて、積立銘柄をころころ変えてしまう。
でも、これには大きな問題があります。
- タイミングが合わない:上がりそうだと思った時には、すでに上がり切っている。逆に下がりそうだと思って避けた銘柄が、その後急上昇する
- 労力が無駄になる:どの銘柄が良いか調べ、チャートを分析し、ニュースを読み込む。この時間と労力が、結果に結びつかない
- 複利の恩恵を逃す:長期投資の最大の武器は「複利」。頻繁に銘柄を変えると、複利が働く時間が短くなる
結果的に、何もしない方がパフォーマンスが良いのです。
罠2:予想が当たると過信する
たまに、予想が当たることがあります。
「新興国に切り替えたら、本当に上がった!」
こうした成功体験があると、「自分は市場を読める」と過信してしまいます。
でも、これは危険です。
予想が当たったのは、運に過ぎません。次も当たる保証はどこにもありません。
むしろ、「当たった」という記憶が強く残り、「外れた」記憶は忘れてしまう。これを「確証バイアス」と言います。
過信した結果、さらに大胆な予想をして、大きく失敗する。これが、予想を続ける人の典型的なパターンです。
罠3:予想に時間とエネルギーを奪われる
予想をするには、時間とエネルギーが必要です。
ニュースをチェックする、チャートを分析する、専門家の意見を読む。これらに、毎日どれだけの時間を使っているでしょうか。
私の場合、1日に30分〜1時間は、こうした「予想のための情報収集」に使っていました。
1年で考えると、180〜360時間。これだけの時間を、予想に費やしていたのです。
結果的に、パフォーマンスは「何もしなかった人」より悪い。
つまり、時間を無駄にしただけでした。
なぜプロでも予想は外れるのか
市場は複雑すぎる
ここで、素朴な疑問が浮かびます。
「プロのアナリストや経済学者なら、予想できるんじゃないか?」
答えは「ノー」です。
市場は、あまりにも複雑です。無数の要因が絡み合い、予測不可能な動きをします。
経済指標、企業業績、政治情勢、自然災害、パンデミック、投資家心理。これらすべてを正確に予測することは、誰にもできません。
プロでさえ、予想は外れます。
「予想が当たった」の大半は運
たまに、「的中させた」と話題になるアナリストがいます。
「リーマンショックを予測した」「コロナ暴落を当てた」
でも、冷静に考えてみてください。
世界中に何千人、何万人ものアナリストがいます。その中で、たまたま当たった人が注目されるだけです。
宝くじで1億円当てた人がニュースになるのと同じです。当たった人は目立ちますが、外れた人は無視されます。
「予想が当たった」の大半は、運に過ぎません。
短期予想と長期投資は別物
もうひとつ重要な点があります。
短期的な予想(来週、来月の動き)と、長期投資(10年、20年の成長)は、まったく別物です。
短期的な動きは、ランダムに近い。誰にも予測できません。
でも、長期的には、経済は成長します。企業は利益を生み出し、株価は上がります。
長期投資では、「いつ上がるか」を予想する必要はありません。「長期的には上がる」という前提で、淡々と積み立てればいいのです。
短期予想をしようとすることが、長期投資では不利になるのです。
「最もリターンが高かったのは、口座を忘れていた人」という話
証券会社の有名なエピソード
投資業界には、有名なエピソードがあります。
ある証券会社が、顧客のパフォーマンスを調査したところ、「最もリターンが高かったのは、口座の存在を忘れていた人」だったという話です。
※この話は複数の証券会社・運用会社で語られている逸話で、統計調査として公式に公表されたものではありません。ただし、メッセージは一貫しています。
「何もしなかった人」が、最も良いパフォーマンスを上げていた。
死亡した顧客 or 口座を忘れた顧客のパフォーマンス
このエピソードには、いくつかのバリエーションがあります。
「死亡した顧客の口座が、最も高いリターンを記録していた」
「口座の存在を忘れていた顧客が、トップパフォーマーだった」
いずれの場合も、共通しているのは「何も手を加えなかった」という点です。
市場が暴落しても、売らない。市場が急騰しても、買い増さない。ただ、持ち続けただけ。
その結果、複利の力をフルに活かして、資産が成長していたのです。
何もしないことの威力
このエピソードが示すのは、「何もしないこと」の威力です。
投資において、「何かをする」ことが常に正しいわけではありません。
むしろ、「何もしない」ことが、最も合理的な選択であることが多いのです。
市場のノイズに惑わされず、予想に振り回されず、ただ持ち続ける。
これが、長期投資で成功するための秘訣です。
私が「予想をやめた」瞬間
1年後に気づいた現実(入れ替えた方 vs 放置した方)
先ほど書いた通り、私は積立銘柄を頻繁に入れ替えていました。
毎月、どの銘柄が良いかを調べ、チャートを分析し、ニュースを読み込む。この作業に、どれだけの時間を使ったでしょうか。
1年後、友人と比較して気づいたのです。
私:銘柄を入れ替え続けた → リターン +8% 友人:インデックス投資を放置 → リターン +15%
数字で見ると、差は歴然でした。
私が「最適化」しようと労力をかけた結果、パフォーマンスは悪化していたのです。
「予想は意味がなかった」という衝撃
この時、本当にショックでした。
毎日チャートを見て、ニュースを読んで、「今月はどれが良いか」を考えていた時間。
少なくとも、私のような個人投資家にとっては、予想はプラスになりませんでした。
いや、プラスどころか、マイナスでした。予想をすることで、パフォーマンスを下げていたのですから。
それから積立銘柄を固定した
この経験をきっかけに、私は積立銘柄を固定しました。
インデックスファンドの組み合わせを決めて、それ以降変えていません。
市場が暴落しても、急騰しても、淡々と積み立てるだけです。
その結果、パフォーマンスは安定し、メンタルも楽になりました。
予想をやめたことが、投資における最大の転機でした。
「予想しない投資」とは何か
インデックス投資の本質
「予想しない投資」とは、インデックス投資のことです。
インデックス投資とは、市場全体に投資する手法です。S&P500やオルカン(全世界株式)のように、多数の企業に分散投資します。
ここには、「個別企業を選ぶ」という予想がありません。「市場全体が成長する」という前提で投資するだけです。
市場全体に賭ける=個別予想をしない
インデックス投資の本質は、「個別の予想をしない」ことです。
「どの企業が伸びるか」を予想する必要はありません。「どの国が成長するか」を予想する必要もありません。
市場全体に賭けることで、個別の予想から解放されます。
Appleが成長しても、Teslaが失敗しても、関係ありません。市場全体が成長すれば、リターンが得られます。
これが、予想しない投資の強みです。
淡々と積み立てる
予想しない投資では、やることは極めてシンプルです。
毎月、決まった金額を、決まった銘柄に積み立てる。
それだけです。
市場が上がっても、下がっても、同じことを続ける。予想をせず、感情に流されず、機械的に積み立てる。
この「シンプルさ」こそが、長期投資で成功するための鍵です。
予想しないことで得られる3つのメリット
メリット1:時間が増える
予想をやめると、時間が増えます。
チャートを見る時間、ニュースを読む時間、「今月はどうしよう」と悩む時間。
これらがすべて不要になります。
私の場合、1日30分〜1時間を投資の「予想」に使っていました。それがゼロになったのです。
この時間を、仕事や趣味、家族との時間に使えるようになりました。
投資は、人生の一部であって、すべてではありません。時間を取り戻すことは、大きなメリットです。
メリット2:メンタルが安定する
予想をやめると、メンタルが安定します。
予想をしていると、常に不安がつきまといます。
「この選択は正しかったのか?」「今月は何を選ぶべきか?」「暴落が来たらどうしよう?」
こうした不安から、解放されます。
予想をしなければ、市場の短期的な動きに一喜一憂する必要がありません。
「長期的には上がる」という前提で、淡々と続けるだけ。これは、精神的に非常に楽です。
メリット3:結果的にリターンが良い
そして、最も重要なメリットが「結果的にリターンが良い」ことです。
予想をやめて、シンプルに積み立てるだけ。これが、統計的に最も良いパフォーマンスを生み出します。
私自身の経験も、データも、すべてこれを裏付けています。
「何もしない人」が、最も良い結果を出す。
これが、長期投資の真実です。
「じゃあ何も考えなくていいのか?」という疑問
予想しない≠思考停止
ここで、よくある疑問に答えます。
「予想しないなら、何も考えなくていいのか?」
答えは「ノー」です。
予想しないことは、思考停止ではありません。
考えるべきことは、たくさんあります。
考えるべきは「資産配分」と「継続力」
予想しない投資でも、考えるべきことがあります。
資産配分:株式と債券の比率、国内と海外の比率、リスク許容度に合わせた配分。これらは、しっかり考える必要があります。
継続力:どうすれば、暴落時でも積立を続けられるか。収入が減った時、どう対応するか。これらは、事前に計画しておくべきです。
つまり、「市場の動き」を予想する必要はないが、「自分の投資戦略」は考える必要があるのです。
市場の動きではなく、自分の行動に集中
予想しない投資の本質は、「市場の動き」ではなく「自分の行動」に集中することです。
市場は、コントロールできません。でも、自分の行動は、コントロールできます。
「毎月いくら積み立てるか」「どの銘柄を選ぶか」「暴落時にどう対応するか」
これらは、自分で決められます。
市場の予想という、コントロールできないことに時間を使うのではなく、自分の行動という、コントロールできることに集中する。
これが、予想しない投資の本質です。
ここまでの内容を、3行でまとめます
- 予想をすることは、時間とエネルギーを奪い、結果的にパフォーマンスを下げる
- 「何もしない人」が最も良いリターンを得るという事実
- 予想をやめて、自分の行動に集中することが長期投資の秘訣
まとめ:予想をやめると投資は楽になる

長期投資では、「予想しない人」の方が有利です。
私自身、積立銘柄を頻繁に入れ替えた結果、パフォーマンスが悪化しました。
友人は、何もせず1つの銘柄を持ち続けただけで、私より良い結果を出していました。
この経験から学んだのは、「予想は意味がない」ということです。
プロでも予想は外れます。市場は複雑すぎて、誰にも読めません。
「何もしない人」が最も良いリターンを得る。これが、投資の真実です。
予想をやめると、時間が増え、メンタルが安定し、結果的にリターンも良くなります。
予想しないことは、思考停止ではありません。資産配分や継続力を考えることは必要です。
でも、市場の動きを予想する必要はありません。自分の行動に集中すればいいのです。
予想をやめると、投資は楽になります。
淡々と、シンプルに、長期で続ける。これが、成功する投資の本質です。
学んだこと
この記事を通じて、私が伝えたかったことは3つです。
- 予想は時間の無駄であり、パフォーマンスを下げる
- 長期投資では「何もしない」ことが最強の戦略
- 市場ではなく、自分の行動に集中する
免責事項
投資に関する情報について 本記事で紹介している内容は、執筆時点(2025年12月)の個人的な経験と考えに基づくものです。投資判断は自己責任で行ってください。
個人の経験について 本記事に記載されている筆者の経験や考え方は個人的なものであり、すべての方に当てはまるものではありません。
パフォーマンスについて 過去のパフォーマンスは、将来の成果を保証するものではありません。
専門家への相談 投資判断については、ファイナンシャルプランナーや証券アドバイザーなどの専門家にご相談されることをお勧めします。
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