史上初の「1グラム2万円」突破という歴史的瞬間
2025年9月29日、田中貴金属工業の店頭小売価格で金が 1グラム=2万円 を突破しました。午前には20,018円、午後には20,133円と過去最高値を更新し、投資家や一般消費者の注目を一気に集めています。
わずか2年前の2023年8月には1万円を超えたばかりであり、短期間での 2倍化 は極めて異例です。さらに、約15年前の2008年と比べれば価格は6倍以上に上昇しており、金の存在感はかつてないほど高まっています。
では、この急騰の背景には何があるのでしょうか。以下では、複数の要因を分解して解説していきます。
金価格高騰の背景にある4つの要因
ポイント1:米国金融政策とドルへの不信感
最大の要因は、米国の金融政策です。FRB(米連邦準備制度理事会)は2025年に入ってから利下げ観測を強めており、「金は利息を生まない資産」という弱点が逆に強みに変わっています。
利下げ局面ではドル資産の魅力が低下し、代替資産として金への資金流入が強まります。さらに、米国の政治不安や財政赤字拡大が「ドルへの不信感」を生み、金が「最後の安全資産」として買われる流れを後押ししています。
ポイント2:円安が国内価格を押し上げ
次に、日本特有の要因として 円安 があります。為替市場では1ドル=160円前後の円安水準が続き、ドル建て金価格が上がらなくても円建てでは価格が跳ね上がる状況です。
結果として「国際的な金高騰」+「円安」の二重効果により、国内での金価格は過去最高を記録しました。
ポイント3:地政学リスクの高まり
中東情勢の緊迫化やウクライナ戦争の長期化など、地政学リスクも金需要を後押ししています。2025年にはイランを巡る国連制裁の強化も報じられ、「有事の金」という格言通り、世界の投資家がリスク回避先として金を選んでいるのです。
ポイント4:国内インフレと資産防衛意識
エネルギーや食品価格の高騰を背景に、日本でも物価上昇が進行。
「円を持つだけでは資産が目減りする」という感覚が広がり、現物の金地金や金ETFを購入する動きが拡大しています。特に、個人だけでなく法人の資産防衛としても金保有が増えつつあります。
国際市場の動向と過去との比較
NY金先物はトロイオンスあたり3,800ドルを突破し、こちらも過去最高水準にあります。金ETFへの資金流入も継続しており、今回の高騰は「一時的なバブル」ではなく「実需に基づいた買い」が中心と分析されています。
過去を振り返ると、金は 世界が不安定なときに買われる資産 として常に注目されてきました。
- 1970年代:オイルショック後に急騰
- 2008年:リーマンショックで金融不安が拡大し、金が安全資産として上昇
- 2020年:コロナショックで再び買いが集中
今回の2万円突破も、この歴史的パターンと重なっています。
投資家はどう向き合うべきか?
ここからは、私自身の投資家としての見解を交えつつ、具体的な行動指針を整理します。
長期的な「保険」として位置づける
金は安全資産ですが、すでに高値圏にあるため、短期的に大きな値上がりを狙うのはリスクがあります。むしろ、資産の 5〜10%程度を長期的に保有する「保険」 として持つのが理想です。
ETFや投資信託の活用
現物の金地金やコインも魅力ですが、保管や手数料を考えるとETFや投資信託を活用した方が効率的です。少額から積み立てることで、値動きに左右されずに長期保有が可能です。
👉 関連記事:ETFと投資信託の違い
他資産との分散が必須
金だけに偏るのは危険です。景気拡大局面では株式の方が高いリターンを生みやすく、不動産やREITも収益源として有効です。金は「株が不安定なときに逆相関で働く資産」として組み合わせることが重要です。
初心者が注意すべきポイント
- 短期売買を狙うと失敗しやすい
- 手数料・スプレッドに注意
- 為替の影響を受ける
- 偏りすぎず分散投資を意識する
👉 関連記事:複利の効果とは
金と暗号資産の比較
暗号資産(仮想通貨)も「新しい安全資産」と語られることがありますが、ボラティリティ(価格変動)の激しさを考えると、伝統的な安全資産としての安定感は金に軍配が上がります。
私自身の考えとしては、「資産防衛は金、チャレンジは暗号資産」 という棲み分けが妥当です。
法人の視点と実需の拡大
輸入企業を中心に、為替ヘッジの一環として金を保有する法人も増えています。円安によるコスト増を和らげる手段として、金の価値はこれからも高まるでしょう。
また、国内では田中貴金属や三菱マテリアルといった販売網を通じ、現物の小口購入が広がっており、個人投資家の間でも「目に見える安心感」が人気を集めています。
投資シナリオ例
もし1,000万円の資産を運用する場合、5〜10%(50〜100万円)を金に振り分ける のが現実的です。残りを株式・債券・不動産などに分散させれば、景気サイクルの変動に対応しやすいポートフォリオになります。
今後の見通しとまとめ
金価格は今後も、
- 米国の金融政策
- 円安・円高の動き
- 地政学リスク
の3要因に強く左右されるでしょう。
短期的にはさらに高値を更新する可能性がありますが、投資家が本当に意識すべきは「買い時を見極めること」ではなく、「金をどのようにポートフォリオに組み込むか」 です。
👉 金は魔法の資産ではありません。しかし、株式や債券とは異なる値動きをするからこそ、長期投資における 安全弁 としての役割を果たすのです。
関連記事
- インデックス投資の魅力|初心者におすすめする理由
- DeCoとNISAの違い|併用すべき?どっちが得か?
- 【完全ガイド】FIREするなら6,000万円!単身で月20万円生活のシミュレーション
- 【最新】S&P500と日経平均が史上最高値を更新!背景・今後の見通しと投資戦略を徹底解説
コメント