2025年春ごろ、トランプ大統領の相互関税に関する発言をきっかけに、世界的に株価が急落する局面がありました。日経平均株価は一時3万5,000円台まで下落。
その時、僕は月1万円に減額していた積立投資を、また減らしてしまいました。
今、それを後悔しています。なぜなら、暴落時こそが積立投資の真価を発揮する「ギフト」だったからです。
今回は、なぜ暴落が積立投資家にとってチャンスなのか、科学的な理由と感情のコントロール方法を解説します。
トランプショックで僕がした「最悪の判断」
まず、僕の失敗談から始めます。
2025年初頭:積立額を減らした直後
年収450万→400万の転職で可処分所得が増えた話──働き方改革が資産形成を可能にした実体験の記事で書いた通り、僕は転職直後に積立額を月6万円から月1万円に減額していました。
その理由は:
転職による収入減への不安 新しい環境への適応 生活防衛資金を厚めに確保したかった
これ自体は、慎重な判断でした。
トランプショックが襲来
そして2025年春ごろ、トランプ政権の関税政策に関する発言により、市場が大きく混乱する局面がありました。
日経平均株価が一時3万5,000円台に急落 米国株も大幅下落 VIX指数(恐怖指数)が急騰
参考:野村證券「日経平均急落をもたらした 米国「トランプ・プット」「パウエル・プット」への疑念」
市場は混乱し、ニュースもSNSも「暴落」の文字で溢れました。
最悪の判断:積立額をさらに減らした
この状況で、僕は積立額を月1万円のまま据え置きました。本当は、転職から3ヶ月経って生活も安定してきたので、月6万円に戻す予定でした。
でも、「もっと下がるかもしれない」という恐怖で、増額できませんでした。
結果として、暴落時に安く買える絶好のチャンスを逃したのです。
この後悔が、今回の記事を書くきっかけになりました。
なぜ暴落は「ギフト」なのか:3つの科学的理由
では、なぜ暴落が積立投資家にとってチャンスなのか。科学的に説明します。
理由1:ドルコスト平均法で平均購入単価が下がる
これが最も重要なポイントです。
積立投資では、毎月同じ金額で投資信託を買います。株価が下がれば、同じ金額でより多くの口数を買えます。これを「ドルコスト平均法」と呼びます。
具体例で見てみましょう:
通常時の積立(株価10,000円)
- 月3万円で3万口購入
- 平均購入単価:10,000円
暴落時の積立(株価7,000円に下落)
- 月3万円で4万2,857口購入
- 平均購入単価:約8,235円に低下
回復後(株価10,000円に戻る)
- 通常のみ積立:利益ゼロ
- 暴落時も継続:約21%の利益
つまり、暴落時に積立を続けることで、平均購入単価が下がり、回復時により大きな利益が得られるのです。
理由2:期待リターンがプラスの資産を安く買えるタイミング
S&P500やオールカントリーのような指数に投資している場合、基本的には優良企業の集合体です。
トランプショックのような局面で株価が下落したからといって、Appleやマイクロソフト、Googleといった企業の価値が半減したわけではありません。
暴落は、一時的な市場の混乱による価格の歪みです。長期的には企業の価値に収束していきます。
つまり、暴落時は「長期的に成長が期待できる優良企業をセール価格で買える」タイミングなのです。
理由3:長期の株式市場リターンの歴史的データ
歴史を振り返ると、どんな暴落も最終的には回復しています。
ITバブル崩壊(2000年)
- NASDAQ:5,048→1,300ポイントに下落
- 回復まで約5年
- その後、さらに成長し最高値を更新
リーマンショック(2008年)
- S&P500:1,565→676ポイントに下落(約56.8%下落)
- 回復まで約4年1ヶ月
- その後、2倍以上に成長
コロナショック(2020年)
- S&P500:約34%下落
- 回復まで約5ヶ月(史上最速)
- その後、最高値を更新
もちろん、将来も必ず同じように回復する保証はありませんが、株式市場全体の長期リターン(実質年率4〜7%程度)を示すデータは数多く存在します。
参考:暴落時代を生き抜く20代の投資戦略──歴史が教える「10年後に後悔しない」資産形成
トランプショックのような局面も同様に、時間とともに回復していく可能性があると考えられています。
ひふみ投信の運用チームも、つみたて投資の継続を推奨しています。「下げ相場でも投資し続けることで、株価が反発するタイミングも捉えることができる」としています。
参考:ひふみラボ「トランプ関税の衝撃 世界ではいま何が起きているのか?個人投資家にできることとは」
感情と仕組みを分ける:暴落時のメンタル設計
ここまで読んで、「理屈は分かるけど、実際に暴落したら怖い」と思いませんでしたか?
僕もそうでした。だから、積立額を増やせなかったのです。
でも、この「感情」こそが、積立投資の最大の敵です。
人間の脳は暴落に弱い
行動経済学では、人間には以下のバイアスがあることが知られています:
損失回避バイアス:利益よりも損失を強く感じる 現状維持バイアス:変化を避けたがる 群集心理:周りが売ると自分も売りたくなる
暴落時、これらのバイアスが一気に襲ってきます。
「このまま下がり続けたらどうしよう」 「みんな売ってるから、自分も売った方がいいのでは?」 「もう投資なんてやめよう」
これは、人間の本能的な反応です。でも、この感情に従うと、積立投資は失敗します。
感情を排除する3つの仕組み
では、どうすれば感情に振り回されずに済むのか。答えは「仕組み化」です。
仕組み1:自動積立の設定
最も効果的なのは、自動積立の設定です。
毎月決まった日に自動で買付 証券口座を見なくても勝手に積立される 感情が入る余地がない
僕の場合、自動積立は設定していましたが、「増額するかどうか」で感情が入ってしまいました。
仕組み2:証券口座を見ない
暴落時、証券口座を毎日チェックするのは精神的に辛いものです。
赤字が増えていくのを見ると、不安が増す 売りたい衝動に駆られる 冷静な判断ができなくなる
おすすめは:
月に1回だけチェック 評価額ではなく、保有口数の増加に注目 長期目線を思い出す
残業削減で見えた”時間の複利効果”──副業・投資・睡眠が人生を変えた話の記事でも書きましたが、時間を味方につけることが重要です。
仕組み3:投資方針を事前に決めておく
暴落が起きる前に、投資方針を決めておきましょう。
決めておくこと:
暴落しても積立を続ける 生活防衛資金(生活費の6ヶ月〜1年分)は別に確保 評価額が下がっても売らない むしろ増額できないか検討する
これを紙に書いて、目に見える場所に貼っておくのも効果的です。
ファイナンシャルプランナーが推奨する暴落時の行動
ここで、専門家の一般的な見解も紹介しておきます。
FPが推奨する暴落時の対応
一般的に、ファイナンシャルプランナーは暴落時について以下のようにアドバイスしています:
積立投資は継続する 生活防衛資金があれば、投資額を減らす必要はない 感情的な判断(売却)を避ける 長期目線を忘れない 余裕があれば、むしろ増額を検討する
これらは、行動経済学や過去のデータに基づいた、合理的なアドバイスです。
投資の大原則:長期・積立・分散
金融庁も推奨する投資の基本原則は、「長期・積立・分散」です。
長期:短期的な変動に惑わされない 積立:ドルコスト平均法で価格を平準化 分散:リスクを複数の資産に分散
暴落時こそ、この原則を思い出すべきです。
参考:積立投資だけが救いだった──焦りの投資から学んだ「ブレない運用」の大切さ
ただし、これらはあくまで一般論です。個々の状況は大きく異なるため、重要な判断は必ず専門家(ファイナンシャルプランナー等)に相談することをおすすめします。
暴落時にやってはいけない3つのNG行動
最後に、暴落時にやってしまいがちな失敗を紹介します。
NG行動1:パニック売却
暴落時、最もやってはいけないのが「パニック売却」です。
なぜダメなのか:
損失が確定してしまう 回復時の利益を逃す 再び買い戻すタイミングが分からない 感情的な判断は大抵失敗する
歴史を見れば、暴落後は必ず回復しています。売却するということは、その回復を諦めることになります。
NG行動2:積立を完全に止める
「もう投資なんてやめよう」と積立を完全に止めてしまうのも危険です。
なぜダメなのか:
暴落時こそ安く買えるチャンス 再開するのが心理的に難しくなる 長期の複利効果が失われる
僕のように月1万円でもいいので、少額でも継続することが大切です。
NG行動3:底値を狙って一括投資
逆に、「今が底だ!」と思って、手持ちの資金を全て投入するのも危険です。
なぜダメなのか:
底値は誰にも分からない さらに下がる可能性もある 生活資金まで投入すると、急な出費に対応できない
積立投資の強みは、「底値を当てる必要がない」ことです。淡々と積み立てることで、自動的に平均購入単価が下がります。
まとめ:暴落はギフト、受け取るか逃すかはあなた次第
トランプショックで僕が学んだこと。それは、「暴落はギフト」だということです。
重要なポイント:
- 暴落時こそ平均購入単価が下がる
- 優良企業をセール価格で買えるチャンス
- 市場は歴史的に必ず回復してきた
- 感情ではなく、仕組みで対応する
- 長期・積立・分散の原則を守る
あの時、僕が積立額を月6万円に戻していたら。
トランプショックの暴落時に、より多くの口数を安く買えていたはずです。そして、回復時にはより大きな利益を得られたでしょう。
でも、感情が邪魔をしました。「もっと下がるかもしれない」という恐怖が。
この失敗を繰り返さないために、今は自動積立を月10万円に設定しています。そして、証券口座は月に1回しか見ません。
次の暴落が来たら、僕は喜んで受け入れます。なぜなら、それは「ギフト」だと知っているからです。
月3万円vs月10万円、20年後の差はいくら?──積立額別シミュレーションと無理のない増額戦略の記事でも書いたように、長期投資では時間が味方になります。
暴落は怖いものではありません。積立投資家にとっては、「安く買えるチャンス」なのです。
このギフトを受け取るか、逃すか。それはあなたの選択次第です。
免責事項
本記事は筆者の個人的な体験と一般的な投資理論に基づく情報提供を目的としており、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的とするものではありません。
投資について:
- 投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります
- 暴落時に積立を続けることが必ずしも正しい選択とは限りません。個々の状況(収入、支出、生活防衛資金、リスク許容度等)により最適な判断は異なります
- 本記事で紹介した「暴落はギフト」という考え方は、長期投資を前提とした一般論であり、すべての投資家に当てはまるわけではありません
- 市場が必ず回復するという保証はありません。過去のデータは将来の結果を保証するものではありません
- 投資判断は必ずご自身の責任において行い、必要に応じてファイナンシャルプランナー(FP)など金融の専門家にご相談ください
下線ではなく暴落時の対応について:
- 生活防衛資金が十分に確保されていない場合は、積立の減額や一時停止も選択肢の一つです
- 精神的な負担が大きい場合は、無理に継続する必要はありません
- 本記事の内容は、安定した収入と十分な生活防衛資金がある前提での議論です
その他:
- 本記事で紹介したトランプショックの事例や筆者の投資判断は個別の事例です
- 行動経済学のバイアスについての説明は一般論であり、個人差があります
- 本記事の執筆者はファイナンシャルプランナーや金融商品取引業者ではありません
読者の皆様におかれましては、本記事の内容を参考情報の一つとして、ご自身の状況に合わせて専門家に相談のうえ、慎重に判断されることを強くおすすめします。執筆者および本サイトは、本記事の内容に基づいて読者が行った判断や行動の結果について一切の責任を負いません。
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参考サイト
- 野村證券:「日経平均急落をもたらした 米国「トランプ・プット」「パウエル・プット」への疑念」
- ひふみラボ:「トランプ関税の衝撃 世界ではいま何が起きているのか?個人投資家にできることとは」
- 第一生命経済研究所:「その後、トランプ危機はどうなったか? ~景気後退リスクの行方~」

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