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為替介入は効果があるのか?──片山財務相の口先介入と、個人投資家が知っておくべき介入の限界

目次

はじめに

2024年12月19日、日銀が30年ぶりの利上げを発表した直後も、円安は止まりませんでした。

1ドル=157円台まで円安が進む中、片山さつき財務相が連続して「口先介入」を強めています。

12月19日:「投機的な動きも含め、行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取る」
12月21日:「為替介入は当然考えられる」
12月22日:「過度で無秩序な変動に対し、断固として措置を取る用意がある」

市場では、「そろそろ実際の介入が来るのでは?」という警戒感が高まっています。

でも、為替介入は本当に効果があるのでしょうか?

この記事では、為替介入の仕組みと限界、そして個人投資家が取るべき行動を整理します。

結論から言うと、為替介入は一時的な対症療法に過ぎず、個人投資家は介入を前提に投資判断をすべきではありません。

この記事で分かること

  • 口先介入とは何か
  • 為替介入の仕組みと過去の実例
  • なぜ介入には限界があるのか
  • 個人投資家が取るべき行動

「口先介入」とは何か──実際の介入までの段階

口先介入のレベル

為替介入には、段階があります。

いきなり実際の介入(円買い・ドル売り)を行うのではなく、まずは「言葉」で市場をけん制します。これを「口先介入」と言います。

口先介入のレベルは、以下のように段階的に強まります。

レベル1:コメントなし
為替について具体的なコメントを避ける段階。

レベル2:「急激な変動は望ましくない」
為替の動きに懸念を示す段階。

レベル3:「憂慮している」
警戒感を明確にする段階。片山財務相は現在この段階。

レベル4:「あらゆる措置を排除せず、必要な対応をとる」
介入を示唆する段階。片山財務相も12月21日にこの表現を使用。

レベル5:レートチェック
日銀が市場参加者に為替取引の状況を照会する行為。介入の準備段階。

レベル6:実際の介入
政府・日銀が実際に外貨市場で円買い・ドル売りを実施。

現在はレベル4の段階

片山財務相の発言を見ると、現在はレベル4の段階です。

「為替介入は当然考えられる」という明言は、市場に対する強いメッセージです。

次のステップは、レートチェック。そして、実際の介入です。

市場は、「そろそろ来るのでは?」と警戒しています。

為替介入の仕組み──政府・日銀が市場に介入する方法

円買い・ドル売り介入

為替介入とは、政府・日銀が外貨市場で通貨を売買することです。

円安を止めるために行うのは、「円買い・ドル売り介入」です。

具体的には:

  1. 政府が保有するドルを売る
  2. 市場から円を買う
  3. ドルの供給が増え、円の需要が増える
  4. 結果的に、円高方向に動く

覆面介入と公表介入の違い

為替介入には、2種類あります。

公表介入
介入の実施を即日公表する方法。2022年9月22日の介入はこのタイプでした。

覆面介入
介入の実施を公表せず、後日統計として発表する方法。市場は「介入があったのでは?」と推測するしかありません。

覆面介入の方が、市場に与える心理的な効果が大きいとされています。

「いつ介入が来るか分からない」という不確実性が、投機的な円売りを抑制するからです。

財務大臣の権限で実施される

為替介入は、財務大臣の権限で実施されます。

日銀は、財務大臣の代理人として、実務を遂行します。

片山財務相が「介入は当然考えられる」と発言しているのは、この権限を持っているからです。

過去の為替介入の実例──2022年と2024年の効果

2022年9月・10月の介入

最近の大規模な介入は、2022年9月と10月に実施されました。

当時、ドル円は150円を超えて急騰していました。

2022年9月22日
1日のみの公表介入。当日に財務大臣と財務官が記者会見。

2022年10月21日・24日
2営業日連続の覆面介入。

介入直後は、円高方向に動きましたが、その後再び円安に戻りました。

2024年7月の介入

2024年7月11日・12日にも、大規模な介入が実施されました。

ドル円が161円台を付けた後、米国の消費者物価指数の下振れに合わせて介入。

この時は、介入後にドル安・円高の流れが続きました。

7月の161円台から、9月には一時139円台まで円高が進みました。

総額24.5兆円の規模

2022年以降の歴史的な円安局面では、合計7日間、総額24.5兆円の円買い介入が実施されました。

24.5兆円という規模は、巨額です。

でも、それでも円安の流れを完全に止めることはできませんでした。

なぜ為替介入には限界があるのか

根本的な金利差は解決できない

為替介入には、限界があります。

最大の理由は、「根本的な金利差を解決できない」ことです。

日本の政策金利が0.75%、米国の政策金利が4.5〜4.75%。

この金利差がある限り、投資家は高金利のドルを買い続けます。

為替介入で一時的に円高になっても、金利差が変わらなければ、再び円安に戻ります。

効果は一時的

過去の介入を見ても、効果は一時的です。

2022年9月の介入では、150円台から一時145円台まで円高になりましたが、その後再び150円を超えました。

介入は、あくまで「時間稼ぎ」です。

根本的な解決策にはなりません。

外貨準備の制約

介入には、外貨準備(政府が保有するドルなどの外貨)を使います。

日本の外貨準備は、約1.2兆ドル(約180兆円)です。

24.5兆円の介入を何度も繰り返せば、外貨準備は底をつきます。

無限に介入できるわけではないのです。

「157円」「160円」の壁は本当に存在するのか

過去の介入水準

市場では、「160円が介入ライン」という見方があります。

実際、2024年7月の介入は、161円台を付けた後に実施されました。

でも、「160円で必ず介入する」というルールがあるわけではありません。

市場の思惑と実際の判断基準

政府・日銀は、特定の水準を介入ラインとして公表していません。

「過度で無秩序な変動」に対して介入する、という基準だけです。

市場は、過去の事例から「160円前後が警戒ライン」と推測しているだけです。

現在の157円台でも、片山財務相が強い警戒感を示しているのは、「変動のスピード」が問題だからです。

水準よりも、「急激さ」が介入の判断基準になります。

思惑で動くのは危険

「160円で介入が来るから、その前に円を買おう」

こうした思惑で動くのは、危険です。

介入のタイミングは、誰にも分かりません。

160円を超えても介入が来ないかもしれないし、157円台で介入が来るかもしれません。

介入を予想して投資判断をすると、タイミングを外して損をします。

為替介入が個人投資家に与える影響

短期的なボラティリティ上昇

為替介入が実施されると、短期的にボラティリティ(価格変動)が上昇します。

介入直後、1日で5円以上動くこともあります。

短期トレーダーにとっては、リスクが高まります。

長期投資家への影響は限定的

一方、長期投資家への影響は限定的です。

介入で一時的に円高になっても、数週間後には元に戻ることが多いからです。

オルカンやS&P500を積立投資している人にとって、介入は「ノイズ」に過ぎません。

為替介入が来ても来なくても、10年・20年の積立投資では影響は薄まります。

介入を気にしすぎると投資が続かない

「介入が来そうだから、今月の積立は止めよう」
「介入後に円高になったら、また始めよう」

こうした判断をすると、投資が続きません。

タイミングを計ろうとして、結局何もできなくなります。

為替介入を気にしすぎると、長期投資の習慣が崩れます。

為替介入を前提に投資判断をしてはいけない理由

タイミングは誰にも分からない

為替介入のタイミングは、プロでも予想できません。

「そろそろ来る」と言われ続けて、結局来ないこともあります。

逆に、予想外のタイミングで突然来ることもあります。

介入を前提にした投資判断は、再現性のない行動になります。

介入後も円安に戻ることがある

介入が実施されても、円高が続くとは限りません。

2022年の介入では、一時的に円高になった後、再び円安に戻りました。

「介入が来たから円高になる」と決めつけるのは、危険です。

根本的な要因が変わらない限り、トレンドは続く

為替のトレンドを決めるのは、金利差、経済成長、財政政策などの根本的な要因です。

介入は、これらの要因を変えるものではありません。

日本と米国の金利差が縮まらない限り、円安圧力は続きます。

介入は、あくまで一時的な対症療法です。

個人投資家がやるべきこと──介入を気にせず分散投資を続ける

ここがポイントです: 為替介入を気にしても、投資判断は変わりません。

①為替介入を予想しない

為替介入のタイミングを予想することは、不可能です。

プロのトレーダーでも、外します。

個人投資家が予想して動くのは、無謀です。

当てられない前提に立つことが、最も現実的です。

②積立は止めない

「介入が来そうだから、今月の積立は止める」

これは、間違いです。

介入が来ても来なくても、10年・20年の積立投資では影響は薄まります。

淡々と積立を続けることが、最も確実です。

③分散投資でリスクを分散する

為替リスクを減らす最も現実的な方法は、分散投資です。

円建て資産と外貨建て資産の両方を持つことで、為替変動のリスクを分散できます。

円安になれば外貨建て資産が上がり、円高になれば円建て資産の価値が相対的に上がります。

どちらに動いても、ポートフォリオ全体への影響を抑えられます。

④ニュースに振り回されない

「片山財務相が介入を示唆した」
「レートチェックが実施された」
「介入が来た」

こうしたニュースが出るたびに、ポートフォリオを変えてはいけません。

ニュースに反応して動くと、タイミングを外して損をします。

長期投資家は、ニュースを見ても、何もしないことが正解です。

関連記事:【投資判断】金利が上がる局面で「やってはいけない投資判断」──利上げ=株安と考える人ほど失敗しやすい理由

ここまでの内容を、3行でまとめます

  • 為替介入は一時的な効果しかなく、根本的な金利差は解決できない
  • 介入のタイミングは誰にも予想できず、介入を前提に投資判断をすべきではない
  • 個人投資家がやるべきことは、介入を気にせず分散投資を続けること

まとめ:為替介入は一時的な対症療法に過ぎない

片山財務相が連続して口先介入を強めています。

「為替介入は当然考えられる」という明言は、市場に対する強いメッセージです。

市場では、「そろそろ実際の介入が来るのでは?」という警戒感が高まっています。

でも、為替介入は一時的な対症療法に過ぎません。

過去の介入を見ても、効果は一時的でした。根本的な金利差が変わらない限り、円安圧力は続きます。

個人投資家にとって、重要なのは「為替介入を予想しないこと」です。

介入のタイミングは、プロでも予想できません。

介入を予想して投資判断をすると、タイミングを外して損をします。

私たちができるのは、分散投資です。

円建て資産と外貨建て資産の両方を持つことで、為替変動のリスクを分散できます。

そして、淡々と積立を続けることです。

10年・20年の積立投資では、為替介入の影響は薄まります。

介入を気にしすぎると、投資が続きません。

為替介入は、一時的な対症療法に過ぎません。でも、分散投資と積立継続は、長期的な解決策です。

だから私は、為替介入のニュースを気にせず、淡々と積立を続けます。

関連記事:【為替】日銀が30年ぶり利上げ、なのに円安が止まらない理由──投資家が知っておくべき為替の基本

学んだこと

この記事を通じて、私が伝えたかったことは3つです。

  • 為替介入は一時的な効果しかない
  • 介入のタイミングは誰にも予想できない
  • 個人投資家は介入を気にせず分散投資を続けるべき

免責事項

為替介入・金融政策に関する情報について
本記事で紹介している内容は、執筆時点(2024年12月)の情報に基づくものです。為替相場や金融政策は変動する可能性があります。

投資判断について
本記事の内容は、特定の投資行動を推奨するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。

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本記事に記載されている筆者の考え方は個人的なものであり、すべての方に当てはまるものではありません。

専門家への相談
具体的な投資判断については、ファイナンシャルプランナーや証券アドバイザーなどの専門家にご相談されることをお勧めします。

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この記事を書いた人

だっちのアバター だっち 会社員投資家

20代後半の会社員投資家です。
「経済的自由=FIRE」を目指し、インデックス投資・個別株・FXを実践中。
初心者にもわかりやすく資産運用の情報を発信しています。
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