2025年10月、WBSで紹介された「暗号資産を担保にしたローン」のニュースは、国内投資家にとって大きな転機を示しています。大和証券がFintertechと連携し、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を担保に円資金を調達できる「デジタルアセット保証ローン」を全国で紹介することになりました。担保掛目は50%、融資額は500万円から最大5億円と、本格的な規模感です。
サービスの要点
- 開始:2025年10月
- 担保資産:BTC・ETH
- 融資範囲:500万円〜5億円
- 担保掛目:50%
つまり、1億円相当のBTCを保有していれば、最大で5,000万円まで借入が可能になります。暗号資産を売却せずに資金化できるため、資産運用の自由度は大きく広がります。
投資家目線での意義
私が特に注目したのは「国内大手証券が、暗号資産を既存の金融インフラに組み込んだ」という事実です。米国では暗号資産ETFの普及や企業による保有拡大が進んでいますが、日本の金融機関は慎重姿勢が強かった。今回の大和証券の動きは、そのバランスが大きく変わり始めているシグナルだと受け止めています。
さらに重要なのは、「税金の壁」で動けなかった層が救われる点です。これまで暗号資産を売却すれば多額の譲渡所得税が発生するため、含み益を持ちながらも現金化できずに悩んでいた投資家は多かったはずです。担保ローンを使えば、評価益を維持したまま円資金を確保でき、課税を先送りしつつ資金繰りや投資チャンスに活用できます。これは、特に大きな含み益を抱える長期保有者にとって大きなメリットです。
リスクにどう向き合うか
もちろんリスクはあります。暗号資産は価格変動が激しいため、下落局面では追加入金や一部精算のリスクが常に存在します。担保掛目が50%と聞くと安心感がありますが、実際には一気に価格が下がればLTV(担保比率)は急上昇します。2022年の暴落を経験した投資家なら、その現実味をよく知っているはずです。
また、借入金利や手数料、保管コストを含めると、資金調達コストは決して軽くありません。「便利だから」と安易に利用せず、返済計画や資金用途を明確にして使うべき仕組みです。
どう活用すべきか
私は、暗号資産担保ローンを「攻めのレバレッジ」ではなく「守りの流動化」として使うべきだと考えます。
具体的には、
- 納税や生活費など、短期的に必要な現金を確保する場面
- 新しい投資機会が来たときに、売却せずに資金を動かしたい場面
- 事業主が資金繰りを安定させるためのブリッジ資金
このような局面です。逆に、借入金で暗号資産を再び買い増すのは非常に危険です。私は過去に相場イベントで狼狽し、損失を拡大した経験があります。その反省から、担保ローンは「資産を守るための選択肢」として位置づけています。
そして何より、税金の影響を考えたとき、この仕組みは現実的で大きな価値があります。「課税を避けたいから売れなかった」人々が資産を活かせるようになるのは、日本の投資環境にとって大きな前進だと思います。
将来展望:銀行でも担保に使える時代が来る?
今回の動きは、証券会社の紹介業務という枠組みですが、私は銀行でも暗号資産を担保にできる時代が来ると考えています。現時点でも海外では、暗号資産を担保に住宅ローンや事業融資を行う事例が生まれています。
日本でも、金融庁のルール整備と金融機関のリスク管理体制が整えば、銀行が積極的に暗号資産を担保資産として評価する未来は十分にあり得ます。そのとき、暗号資産は株式や不動産と並ぶ「担保資産」として、完全に金融システムに組み込まれるでしょう。
これは単に暗号資産の信頼性向上にとどまらず、日本における資産形成の常識を変える転機になるかもしれません。
関連サイト
まとめ
WBSで紹介された暗号資産担保ローンは、単なる新商品ではなく、日本の金融と投資文化を大きく変える可能性を持っています。税金で縛られて動けなかった人たちに活路を与えること、そして将来的には銀行ローンの担保資産としても認められる可能性があること──この二つは投資家にとって非常に大きな意味を持ちます。
私は、この動きを「資産活用の多様化」として前向きに評価しつつ、リスク管理を怠らない姿勢を持ち続けたいと考えています。
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