はじめに
「1週間で3000倍」
2026年1月、日本発のミームコインが驚異的な暴騰を記録し、SNSを中心に大きな話題となった。しかし、その直後に待っていたのは約88%の大暴落。わずか数日で、多くの人が大きな損失を被る結果となった。
「自分も買っておけば…」と思った人もいるかもしれない。しかし、このニュースが示しているのは、一攫千金の夢ではなく、投機の厳しい現実だ。
この記事では、何が起きたのかを整理し、なぜこうなったのか、そしてこの出来事から何を学ぶべきかを考える。
この記事の結論
- 日本発ミームコインは1週間で約3000倍に暴騰した後、88%暴落した
- これは「パンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる典型的なパターン
- 後から参入した人ほど損をする構造であり、堅実な資産形成とは対極にある
何が起きたのか
時系列で整理
今回の出来事を時系列で振り返ってみよう。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年12月25日 | pump.funで日本発ミームコインがローンチ |
| 2026年1月6日頃 | 約3000倍に暴騰、時価総額5000万ドル超 |
| 1月6日 | BitMart・MEXCなどの取引所に上場 |
| 1月7日 | 高値から約88%暴落、時価総額は約660万ドルに |
わずか2週間足らずの出来事だ。最高値の0.055ドルから、0.0066ドル付近まで急落した。
pump.funとは
今回のトークンは「pump.fun」というプラットフォームで発行された。pump.funは、誰でも簡単にトークンを作成・発行できるサービスで、ミームコインの発行に多く使われている。
重要なのは、pump.funで発行されたトークンは、日本の金融庁に登録された事業者によるものではないということ。つまり、投資家保護制度の適用対象外であり、何か問題が起きても補償は一切ない。
取引所上場と暴落のタイミング
注目すべきは、取引所への上場と暴落のタイミングだ。
BitMartやMEXCといった取引所に上場したことで、より多くの人がこのトークンを買えるようになった。しかし、上場直後から急速な売りが進行し、価格は暴落した。
取引所上場は「好材料」に見えるが、実際には「売り抜けのタイミング」になることも多い。早期に保有していた人が、上場を機に大量に売却するパターンだ。
なぜこうなったのか
「パンプ・アンド・ダンプ」とは
今回のチャートは、典型的な「パンプ・アンド・ダンプ(Pump and Dump)」のパターンを示している。
パンプ・アンド・ダンプとは:
- 一部の人が安値で大量に買い集める(または最初から保有している)
- SNSなどで話題を作り、価格を吊り上げる(パンプ)
- 価格が上がったところで、早期保有者が売り抜ける(ダンプ)
- 後から入った人が高値掴みし、暴落で損失を被る
この構造では、早く入った人が得をし、後から入った人が損をする。そして「後から入る人」の多くは、SNSで話題になってから興味を持った一般の人々だ。
情報の非対称性
ミームコインの世界では、情報の非対称性が極端に大きい。
- 開発者や初期参入者は、トークンの発行量や保有状況を把握している
- 一般の参入者は、SNSの情報だけで判断するしかない
- 「誰が、いくら持っているか」が見えにくい
この情報格差が、後から入った人が不利になる構造を生み出している。
誰が損をしたのか
暗号資産に詳しくない層も参入
今回のトークンは、暗号資産に詳しいユーザーだけでなく、まったく関係ない層からの購入も多かったと報じられている。
「3000倍になった」というニュースを見て、「自分も乗り遅れたくない」と思った人が、仕組みをよく理解しないまま購入してしまったケースも多いだろう。
「含み益4000万円が消えた」事例
関連ニュースでは、含み益4000万円が暴落で消えた事例も報じられている。
重要なのは「含み益」という点だ。売却して利益を確定しない限り、それは実現した利益ではない。価格が暴落すれば、含み益は一瞬で消える。
「まだ上がるかも」と思って売らなかった人、あるいは売ろうとしても流動性が低くて売れなかった人が、大きな損失を被った。
高値掴みのリスク
最も損失が大きいのは、高値圏で買った人だ。
0.05ドル付近で買った人は、0.0066ドルまで下落すると約87%の損失。100万円投資していたら、13万円程度にまで減る計算だ。
「もう少し上がるかも」「まだ間に合う」という心理が、最悪のタイミングでの購入につながってしまう。
ミームコインのリスク
金融庁に登録されていない=投資家保護なし
日本で仮想通貨(暗号資産)を取り扱う事業者は、金融庁への登録が義務付けられている。登録事業者であれば、一定の投資家保護制度が適用される。
しかし、pump.funで発行されたトークンは、登録事業者によるものではない。つまり:
- 詐欺やトラブルがあっても、補償はない
- 金融庁の監督対象外
- 問題が起きても自己責任
海外の取引所で購入する場合も同様で、日本の法律による保護は受けられない。
流動性リスク
ミームコインは流動性(売買のしやすさ)が極めて低いことが多い。
今回のトークンも、暴落時の流動性は約34.8万ドル(約5000万円程度)しかなかった。つまり、大量に売ろうとしても、買い手がいなければ売れない。
「売りたいときに売れない」というのは、想像以上に恐ろしいリスクだ。価格が下がっていくのを見ながら、何もできない状況に陥る。
価格操作の可能性
時価総額が小さいトークンは、少額の資金で価格を大きく動かせる。これは、価格操作が容易であることを意味する。
株式市場では違法とされる行為も、規制のない暗号資産市場では野放しになっているケースがある。
「3000倍」に心が動く心理
FOMO(取り残される恐怖)
「3000倍になった」というニュースを見ると、多くの人が「自分も買っておけば…」と思う。これは「FOMO(Fear Of Missing Out)」と呼ばれる心理だ。
- 周りが儲けているのに、自分だけ取り残されている
- 今すぐ行動しないと、チャンスを逃してしまう
- 考えている暇はない、とにかく買わなきゃ
この焦りが、冷静な判断を奪い、高値掴みにつながる。
SNSで広がる「成功体験」の罠
SNSでは、成功した人の声ばかりが目立つ。
「100万円が3億円になった」
「人生が変わった」
こうした投稿を見ると、自分にもできるような気がしてくる。しかし、その裏には、損失を被った圧倒的多数の人がいる。失敗した人は、わざわざSNSで発信しない。
見えているのは「生存者バイアス」のかかった、ごく一部の成功例だけだ。
「次こそは」の危険性
今回損をした人の中には、「次こそは早く入れば儲かる」と考える人もいるだろう。
しかし、次のミームコインで早期参入できる保証はない。そして、早期参入したとしても、それが暴騰するかどうかは誰にも分からない。
「次こそは」という思考は、さらなる損失への入り口になりかねない。
堅実な資産形成との違い
投機と投資の違い
今回のミームコイン購入は「投資」ではなく「投機」だ。
| 項目 | 投資 | 投機 |
|---|---|---|
| 目的 | 長期的な資産形成 | 短期的な利益 |
| 根拠 | 企業価値・経済成長 | 価格変動の予測 |
| 期間 | 数年〜数十年 | 数日〜数週間 |
| リスク | 分散可能 | 集中・ハイリスク |
| 結果 | プラスサムになりうる | ゼロサム(誰かの損が誰かの得) |
投資は、経済全体の成長に乗ることで、参加者全員がプラスになりうる。一方、投機は誰かが得をすれば誰かが損をするゼロサムゲーム(手数料を考えるとマイナスサム)だ。
インデックス投資の「退屈だけど着実」な成長
S&P500やオルカンに連動するインデックスファンドは、年平均5〜7%程度のリターンが期待される。
「1週間で3000倍」に比べると、退屈に感じるかもしれない。しかし、年7%でも20年続ければ約3.9倍、30年なら約7.6倍になる。
派手さはないが、再現性があり、多くの人が恩恵を受けられる。これが「投資」の本質だ。
関連記事:インデックス投資の魅力|初心者が安心して資産を育てられる理由
私の考え
私自身は、ミームコインや暗号資産への投機はしていない。
理由はシンプルで、「自分には価値を判断する能力がない」と思っているからだ。
株式なら、企業の利益や成長性という判断基準がある。しかし、ミームコインには本質的な価値の裏付けがない。価格が上がるか下がるかは、完全に「他の人がどう動くか」に依存している。
それは投資ではなく、ギャンブルに近い。そして、ギャンブルで勝ち続けることは、私にはできないと思っている。
「3000倍」という数字を見ると心が動くのは事実だ。しかし、その裏で88%の暴落があり、多くの人が損失を被っている。その現実を見れば、自分が「勝つ側」に入れる保証はどこにもない。
だから私は、退屈かもしれないが、インデックス投資を淡々と続ける。それが自分にとって、最も再現性の高い資産形成だと考えている。
関連記事:20代から始める資産運用|FIREを目指す私の投資方針と実体験
まとめ
日本発ミームコインは、1週間で約3000倍に暴騰した後、88%の大暴落を記録した。これは「パンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる典型的なパターンであり、早期参入者が売り抜け、後から入った人が損をする構造だ。
「3000倍」という数字は魅力的に見える。しかし、その裏には、高値掴みで大損した多くの人がいる。SNSで見える成功体験は、ごく一部の生存者に過ぎない。
投機で一攫千金を狙うか、堅実に投資を続けるか。どちらを選ぶかは自由だが、リスクを正しく理解した上で判断することが大切だ。
私は、退屈でも着実なインデックス投資を選ぶ。再現性があり、多くの人が恩恵を受けられる方法だと信じているからだ。
関連記事:投資しないことは本当に「安全」なのか──20代投資家が考えるインフレと機会損失のリスク
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。暗号資産への投資は極めてハイリスクであり、価格変動による損失は自己責任となります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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