はじめに
2026年1月6日、中国商務部が軍民両用品目の対日輸出規制を発表した。
レアアース(希土類)も含まれるとされ、日本の産業界に衝撃が走っている。SNS上では一部で「日本はすでに対策済み」「中国涙目」と楽観論が広がっているが、本当にそうだろうか?
私自身、S&P500とオールカントリーに投資しているが、こうした地政学リスクは株式市場にも影響を与える。実際、1月13日には日経平均が1,609円高と急騰し、レアアース関連銘柄が軒並み上昇した。
この記事の結論
- 中国レアアース輸出規制は2010年以来の再来
- 日本の対策は進展したが、中国依存度は依然60%
- 本質的リスクは”精製過程の中国依存”にある
- EV・半導体・自動車関連企業への影響は不可避
- 投資家は短期材料ではなく構造的リスクを見極めるべき
中国レアアース輸出規制とは何か
結論から言うと、中国は日本へのレアアース輸出を事実上制限する措置を取った。
規制の内容
報道によれば、中国商務部は1月6日、軍民両用(デュアルユース)品目の対日輸出を即日禁止すると発表したとされる。
レアアースも含まれる可能性が高く、日本の産業界に大きな影響を与える見込みだ。
民生用も制限されている実態
日本経済新聞の報道によれば、中国政府はレアアースの対日輸出について、民生用も制限していることが1月9日に明らかになったとされる。
中国商務省は「民生用への影響はない」と述べていたが、実際には輸出許可が滞っている模様だ。
背景:高市首相の台湾有事発言
この規制の背景には、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁があるとされる。
報道によれば、高市首相は「台湾有事は存立危機事態にあたる」と述べ、集団的自衛権の行使を示唆したことが、中国側の反発を招いたとされる。
参考:日本経済新聞 – 中国、軍民両用物資の対日輸出規制を強化
2010年の尖閣問題との類似性──「15年前の過ち」とは
結論から言うと、2010年の尖閣問題と今回の状況は酷似している。
2010年に何が起きたか
2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船と衝突する事件が発生した。
中国側船長の逮捕を巡り日中関係が悪化し、中国は日本へのレアアース輸出を事実上停止した。当時、日本企業はレアアースの90%以上を中国から輸入しており、サプライチェーンに大きな影響が出た。
その後、日本は何をしたか
この経験から、日本は中国依存度を下げる取り組みを進めた:
① オーストラリアやベトナムからの輸入拡大 ② レアアースフリー技術の開発 ③ リサイクル技術の向上 ④ 南鳥島周辺の海底資源開発
その結果、中国依存度は2010年の90%から2020年には58%まで低下したとされる。
ダイヤモンド・オンライン記事の警告
しかし、ダイヤモンド・オンラインの記事は「日本勝利と浮かれるな」と警告している。
15年前も同じように「脱中国成功」と楽観視したが、結局、中国のレアアース支配は続いた。このときの混乱が日本に「脱中国依存」を促したが、15年を経ても構造的な課題は残っている。今回も、同じ過ちを繰り返す可能性があるという指摘だ。
参考:ダイヤモンド・オンライン – 中国は涙目?「レアアース輸出規制」で”日本勝利”と浮かれる人が繰り返す”15年前の大失敗”
日本の依存度は本当に下がったのか?
結論から言うと、依存度は下がったが、依然として高い水準だ。
全体では60%に低下
経済産業省と野村総合研究所の推計によれば、レアアース全体で輸入に占める中国の割合は、2009年の85%から2020年には58%まで低減した。
これは、オーストラリアのライナス社との協力や研究開発による成果だ。
しかし重レアアースは100%依存
問題は「重レアアース」だ。
報道によれば、EV用モーターに使用されるネオジム磁石の補助材料であるジスプロシウム、テルビウムなどの重レアアースは、ほぼ100%を中国に依存しているとされる。
つまり、中国が本気で輸出規制をすれば、日本のEV産業は止まる可能性がある。
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経済損失の試算──3ヶ月で6,600億円
結論から言うと、レアアース輸出規制が3ヶ月続くと、経済損失は約6,600億円に達するとの試算がある。
野村総合研究所の試算
野村総合研究所は以下のように試算している:
- 3ヶ月の供給途絶:約6,600億円の経済損失(GDP押し下げ効果 -0.11%)
- 1年間の供給途絶:約2.6兆円の経済損失(GDP押し下げ効果 -0.43%)
短期的にはコスト上昇や生産停滞が、中長期的には供給網の再構築が企業収益を圧迫する可能性がある。
消費者への影響
レアアース不足は、私たちの生活にも直接影響する:
① 自動車の納期遅延:EVやハイブリッド車の生産が滞る ② 家電・電子機器の供給制約:スマホ、PC、家電が品薄に ③ 価格高騰:2010年規制時に観測された数倍規模の値上がりの再現
日本の対策は十分か?
結論から言うと、対策は進んでいるが、まだ十分ではない。
① オーストラリア・フランスからの調達
小林鷹之・自民党政調会長は「重レアアースに関しては昨年10月からもうオーストラリアから輸入が始まっています」と発言したとされる。
双日とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)は、オーストラリアのライナス社に出資し、日本で初めてレアアースの権益を確保した。
② 南鳥島の海底資源開発
報道によれば、1月11日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」が清水港を出港し、南鳥島沖で世界初となる深海レアアース泥の試掘を開始したとされる。
南鳥島周辺の海底には、推定埋蔵量約1,600万トンのレアアースが眠っているとされ、国内需要の数百年分に相当すると言われている。
③ レアアースフリー技術の開発
プロテリアル(旧日立金属)や大同特殊鋼などは、レアアースを使わない、あるいは使用量を極端に抑えた高性能磁石の開発を進めている。
大同特殊鋼は、重レアアースを一切使用しないSmFeN(サマリウム・鉄・窒素)磁石を開発し、実用化で先行しているとされる。
問題は「採掘」ではなく「精製」──中国が91%支配する構造的ボトルネック
結論から言うと、問題は「採掘」ではなく「精製」だ。
IEA(国際エネルギー機関)によると、レアアース精製の世界シェアの91%を中国が握る。
つまり、たとえ南鳥島で豊富に採掘できても、最終製品に使える形へ精製する工程は中国に依存したままだ。
この”ボトルネック”こそ、日本のサプライチェーンが抱える最大の脆弱性である。
ダイヤモンド記事の核心
ダイヤモンド・オンラインの記事は、この点を強調している。
「採掘できればいいってもんじゃない」「精製・加工段階で中国を経由せざるを得ない」という構造的脆弱性が、日本の最大の弱点だ。
日本の精製企業は限定的
報道によれば、日本でレアアースを本格的に精製できる企業は現時点でほとんど存在しないとされる。
南鳥島のレアアース泥が商業化された場合、政府が民間企業に精製参画を要請する可能性があるが、技術確立には相応の時間を要すると見られる。
投資家が注目すべき関連銘柄
結論から言うと、レアアース問題は株式市場に大きな影響を与える。
1月13日の市場反応
報道によれば、1月13日の東京株式市場で日経平均株価は前週末比1,609円(3%)高の53,549円と最高値を更新したとされる。
東洋エンジニアリングがストップ高を記録するなど、レアアース関連銘柄が軒並み上昇した。
注目すべき4つのパターン
投資家の視点では、レアアース関連銘柄は以下の4つのパターンに分類できる:
① リサイクル・精製関連
DOWA ホールディングス(5714)
- レアアースのリサイクル・精製に強み
- 「都市鉱山」の活用が期待される
② レアアースフリー技術関連
大同特殊鋼(5471)
- SmFeN磁石(重レアアースフリー)を開発
- EV用モーター向けに実用化が進む
TDK(6762)
- レアアースを使わない磁石の開発
③ 海底資源開発関連
東洋エンジニアリング(6330)
- 海底6,000mからレアアース泥を回収するシステムの技術開発
- 1月13日にストップ高
日揮ホールディングス(1963)
- サブシー技術を活用した資源開発
石油資源開発(1662)
- 鉱山オペレーターとして期待
東亜建設工業(1885)
- 海洋土木、港湾インフラ整備
岡本硝子(7746)
- 深海用探査機「江戸っ子1号」を開発
- 南鳥島沖でのレアアース泥採泥試験に使用
④ 資源権益確保関連
双日(2768)
- 豪ライナス社に出資、レアアースの権益を確保
影響を受ける企業
一方、レアアース不足で影響を受ける可能性がある企業:
- 自動車メーカー:トヨタ、ホンダ、日産など(EV・HV生産に影響)
- 電子部品メーカー:村田製作所、TDK、京セラなど
- 工作機械メーカー:DMG森精機、ファナックなど
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投資家の視点:地政学リスクを織り込んだポートフォリオを
私自身、S&P500とオールカントリーに投資を続けているが、レアアース問題は改めて地政学リスクの重要性を認識させられた。
なぜ分散投資が重要か
理由は3つある:
① 特定セクターへの集中リスク レアアース問題は、自動車・電子部品・工作機械など幅広い産業に影響する。日本株に集中投資していると、このようなリスクに直撃される。
② 地政学リスクの不確実性 中国の輸出規制がいつまで続くか、どこまで厳格化されるかは予測できない。15年前も同じような状況だったが、結局、中国依存は続いた。
③ 長期的には構造的要因が重要 短期的にはレアアース関連銘柄が上昇するが、長期的には企業業績や技術革新の方が重要だ。
私の投資方針
私は、以下の方針で投資を続ける:
① S&P500・オルカンへの積立継続 地政学リスクに左右されず、世界経済全体の成長に賭ける。
② 日本株への集中投資を避ける レアアース問題は日本固有のリスク。グローバルに分散することでリスクヘッジする。
③ 短期的な値動きに惑わされない レアアース関連銘柄は短期的に大きく動くが、長期的な成長性は不透明。安易に飛びつかない。
「日本勝利」と浮かれる危険性
SNSでは「日本は対策済み」「中国涙目」といった楽観論が広がっている。
しかし、ダイヤモンド・オンラインの記事が指摘するように、15年前も同じように楽観視したが、結局、中国依存は続いた。
精製工程で中国が91%のシェアを持つという構造的ボトルネックがある以上、「日本勝利」と浮かれるのは危険だ。
投資家がすべきこと
投資家は**「地政学リスクを短期イベントではなく構造的変数」として捉えるべきだ**。
短期の値動きに反応せず、長期視点でリバランスと分散を続けることが最良の防御となる。
関連記事:S&P500とオールカントリー、どちらに投資すべきか?
まとめ:構造的リスクを見極め、世界分散で備えよ
日本は”脱中国”を進めてきたとはいえ、精製を含む供給網の主導権は依然として中国にある。
「日本勝利」という見方は短絡的だ。2010年と同じ過信を繰り返せば、再び供給ショックに直面する可能性がある。
投資家は、短期的上昇ではなく構造的リスクを見極め、世界分散ポートフォリオで備える姿勢が求められる。
レアアース関連銘柄は短期材料として注目される一方、長期トレンドは不透明だ。短期的な思惑に乗らず、淡々と分散投資を続けることが重要だ。
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免責事項
本記事は、私個人の考えと調査に基づいて執筆したものだ。レアアース問題や地政学リスクは不確実性が高く、将来の動きを保証するものではない。投資判断はご自身の責任で行っていただきたい。

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