はじめに
転職活動をしていた頃、私は「年収」ばかりを見ていた。
年収500万円の会社と年収450万円の会社なら、当然前者を選ぶ。そう考えるのが普通だと思っていた。
しかし、実際に働き始めて気づいた。可処分所得を大きく左右するのは、年収そのものよりも福利厚生だということに。
私が現在利用している福利厚生は3つある。
- 社宅(家賃の8割補助)
- 企業型DC(月4万円拠出)
- 食事補助(月3,500円、今後7,500円に引き上げ予定)
この3つだけで、年間約70〜80万円規模の「得」が生まれている。しかも、税金や社会保険料がかからないため、給料で同じ額を得ようとすると、額面で100万円以上の昇給が必要になる。
この記事では、社宅・企業型DC・食事補助という3つの福利厚生を「利回り」という投資的な視点で比較していく。普通の投資ではありえない水準の「リターン」が、実はすぐ目の前にある。
会社選びで「年収」だけを見ていた人に、ぜひ読んでほしい。
この記事の結論
- 社宅・企業型DC・食事補助は、税制を使ったチート級の制度
- 昇給より確実で、元本割れせず、利回りで考えると普通の投資ではありえない水準
- 「会社選び=年収」だけでは不十分──福利厚生で可処分所得は大きく変わる
なぜ福利厚生は”利回りが高い”のか
結論から言うと、福利厚生は非課税または社会保険料の対象外だからだ。同じ価値でも、支払う税金が違う。これが、実質利回りを跳ね上げる。
※ 本記事でいう「利回り」は、投資商品の年利ではなく、自己負担に対してどれだけ可処分所得が増えるかを便宜的に年率換算したものだ。
給料アップの現実
まず、給料が上がった場合を考えてみよう。
例えば、月10万円の昇給があったとする。しかし、この10万円がそのまま手取りになるわけではない。
- 所得税(約5〜20%)
- 住民税(約10%)
- 社会保険料(約15%)
これらが差し引かれるため、実際の手取り増加は6〜7万円程度になる。額面10万円の昇給でも、実質的には6〜7万円しか増えていない。
福利厚生の本質
一方、福利厚生は非課税または社会保険料の対象外になる場合が多い。
例えば、社宅で月5万円の補助を受けた場合、この5万円には所得税も住民税も社会保険料もかからない。つまり、5万円がそのまま「得」になる。
給料で5万円を手取りで増やそうとすると、額面で約7〜8万円の昇給が必要だ。この差が、福利厚生の「利回りが高い」理由だ。
関連記事:節税より先に見るべき数字──「可処分所得」を知らないと、お金は増えない
投資というより「制度ハック」
ただし、これは厳密には「投資」ではない。制度ハックと呼ぶ方が正確だ。
投資は、リスクを取ってリターンを得る行為だ。一方、福利厚生は、リスクなしで確実に得られる。元本割れもなければ、市場の変動に左右されることもない。
ただ「使うだけ」で、利回り換算すると異常な数字が出る。これが、福利厚生の最大の強みだ。
① 社宅:利回りが異常に高い制度
結論から言うと、社宅は3つの中で最も利回りが高い。私の場合、年間約60万円以上の「得」が生まれている。
仕組み
社宅とは、企業が従業員に提供する住居のことだ。企業が家賃の一部(または大半)を負担し、従業員は残りを自己負担する。
重要なのは、この補助が給与ではなく福利厚生として扱われることだ。一定の条件を満たせば、企業負担分は従業員の給与として課税されない。
私の実例
私の場合、以下のような条件で社宅を利用している。
- 家賃:月8万円
- 企業負担:8割(約6.4万円)
- 自己負担:2割(約1.6万円)
つまり、毎月6.4万円の補助を非課税で受けていることになる。
数字で見る「得」
これを年間で計算すると:
- 企業負担:6.4万円 × 12ヶ月 = 76.8万円
もし、この76.8万円を給料として受け取る場合、税金と社会保険料が引かれるため、額面で約110万円の昇給が必要になる。
さらに、自己負担1.6万円で8万円の家賃の物件に住めているため、実質的には6.4万円の価値を毎月得ているとも言える。
利回りの考え方
投資の視点で考えると:
- 投資額:自己負担 月1.6万円(年19.2万円)
- リターン:企業負担 月6.4万円(年76.8万円)
- 実質リターン:76.8万円 – 19.2万円 = 57.6万円
- 利回り:(57.6万円 ÷ 19.2万円)× 100 = 約300%相当
これは、普通の投資ではありえない水準だ。株式投資の年率リターンが7%程度と言われる中で、社宅は利回り感覚では年300%前後という異常な数字が出る。
デメリット:立地と会社依存
ただし、社宅には大きなデメリットもある。
まず、立地が選べないことが多い。企業が指定した物件に住む必要があるため、通勤時間や生活環境が自分の希望と合わない場合もある。
次に、会社依存だ。転職すれば社宅を出なければならないため、住居の自由度は低い。
それでも、私はこのデメリットを受け入れても、社宅を利用する価値があると判断した。年間60万円以上の「得」は、それだけ大きい。
※ 社宅の非課税扱いは、家賃相当額や床面積など国税庁の定める条件を満たす必要がある。すべての社宅で同じ効果が出るわけではない。
② 企業型DC:やるだけで20〜30%得する仕組み
結論から言うと、企業型DCは「やるだけで20〜30%得する」制度だ。私は月4万円を拠出しており、年間で約10万円の節税効果がある。
仕組み
企業型DC(確定拠出年金)は、給与から一定額を拠出し、自分で運用する制度だ。
最大の特徴は、拠出額が所得税・住民税の対象外になり、制度設計によっては社会保険料の算定にも影響する点だ。つまり、拠出した分だけ課税所得が減り、税金が安くなる。
私の実例
私は現在、月4万円を企業型DCに拠出している。
- 年間拠出額:4万円 × 12ヶ月 = 48万円
この48万円は、所得税と住民税の対象外になる。さらに、条件によっては社会保険料も減る。
数字で見る「得」
私の場合、所得税率が約10%、住民税が10%、社会保険料が約15%(概算)として計算すると:
- 所得税の節税:48万円 × 10% = 4.8万円
- 住民税の節税:48万円 × 10% = 4.8万円
- 社会保険料の削減:48万円 × 15% = 7.2万円(※制度により異なる)
合計すると、年間約16.8万円の節税・削減効果がある。
※ 社会保険料の削減効果は、会社の制度設計によって異なる。所得税・住民税の節税効果はほぼ確実だが、社会保険料については個別確認が必要だ。
保守的に見積もっても、年間約10万円の節税効果があると言える。
利回りの考え方
企業型DCの「利回り」は、通常の投資リターンとは別に考える必要がある。
- 投資額:年48万円
- 節税効果:年10万円
- 実質的な利回り:(10万円 ÷ 48万円)× 100 = 約21%相当
つまり、運用リターンがゼロでも、初年度で21%相当のリターンが得られる。これは、普通の投資では考えられない数字だ。
さらに、運用益も非課税(※一部制限あり)なので、長期的には複利効果も加わる。
関連記事:企業型DCは”やるだけで20%得する”投資──節税効果を数字で解説
デメリット:引き出し制限
ただし、企業型DCには引き出し制限がある。
原則として、60歳まで引き出せない。急な出費に対応できないため、生活防衛資金とは別に考える必要がある。
それでも、老後資金の形成という目的であれば、この制約はデメリットというより「強制的に貯蓄できる仕組み」として機能する。
私自身、「60歳まで引き出せない」という制約があるからこそ、淡々と積み立てを続けられている。
③ 食事補助:毎月100%リターンが出る制度
結論から言うと、食事補助は「毎月100%リターン」が得られる制度だ。私は現在月3,500円を利用しており、今後7,500円に引き上げる予定だ。
仕組み
食事補助は、企業が従業員の食事代を補助する制度だ。一定の条件を満たせば、月額7,500円まで非課税で受け取れる(2026年4月または2027年1月施行予定)。
企業が半額以上を負担する必要があるため、従業員の自己負担は最大で月3,750円だ。
私の実例(現在)
私は現在、月3,500円の食事補助を利用している。
- 自己負担:月1,750円
- 企業負担:月1,750円
- 合計:月3,500円分の食事が利用可能
つまり、月1,750円の自己負担で、3,500円分の食事を非課税で受けている。
今後の引き上げ(予定)
2026年4月または2027年1月に非課税枠が7,500円に引き上げられる予定だ。私も、施行されたら上限を引き上げる予定だ。
- 自己負担:月3,750円
- 企業負担:月3,750円
- 合計:月7,500円分の食事が利用可能
数字で見る「得」
7,500円に引き上げた場合を計算すると:
- 投資額:自己負担 月3,750円(年45,000円)
- リターン:企業負担 月3,750円(年45,000円)
- 実質的な得:年45,000円
- 利回り:(45,000円 ÷ 45,000円)× 100 = 100%相当
つまり、**利回り感覚では年100%**という驚異的な数字が出る。しかも、これは毎月確実に得られる。
生活面の効果
食事補助の効果は、金額だけではない。
実際に使っている私の実感として、以下のような変化があった。
- 食事の選択肢が広がり、栄養バランスの取れた食事を選びやすくなった
- 午後の集中力が落ちにくくなり、無駄な間食も減った
- 「節約しなきゃ」という判断疲れが減り、仕事に集中できるようになった
金額以上に、生活の質が上がるという効果が大きい。
関連記事:食事補助7,500円に引き上げ──「手取りが増える」より生活が楽になる理由
デメリット:使途限定
ただし、食事補助は使途が限定される。
現金として受け取れるわけではなく、食事にしか使えない。また、利用できる店舗が限られている場合もある。
それでも、どうせ食事はする。その食事代が半額になるなら、十分に価値がある。
3つをまとめて比較
結論から言うと、3つの制度を利回りで比較すると、以下のようになる。
| 制度 | 年間メリット | 利回り感覚 | デメリット |
|---|---|---|---|
| 社宅 | 約60万円以上 | 年300%前後相当 | 立地・会社依存 |
| 企業型DC | 約10万円 | 年20〜30%相当 | 引き出し制限(60歳まで) |
| 食事補助 | 約4.5万円 | 年100%相当 | 使途限定(食事のみ) |
※ 数値は私の実例に基づく概算。個人の状況により異なる。
合計すると
※ 社宅の効果が大きいため全体の大半を占めているが、他2制度は比較的コンパクトな積み上げになる。
3つを合計すると、**年間約75万円以上の「得」**が生まれている。
これを給料で得ようとすると、税金と社会保険料を考慮して、額面で約110万円以上の昇給が必要だ。
つまり、福利厚生があるかないかで、年収110万円分の差が生まれているということだ。
会社選びでの考え方
結論から言うと、「年収+50万円」と「福利厚生+50万円」は、可処分所得への影響がまったく違う。
年収だけでは見えないもの
転職サイトで「年収500万円」と「年収550万円」の求人を見たとき、多くの人は後者を選ぶだろう。
しかし、年収550万円でも、福利厚生がなければ、可処分所得は思ったほど増えない。税金と社会保険料が引かれるからだ。
一方、年収500万円でも、社宅・企業型DC・食事補助があれば、可処分所得は年収600万円以上の人と同等かそれ以上になる可能性がある。
「年収が低くても楽な会社」が存在する理由
よく「年収は低いけど、なぜか生活が楽」という会社の話を聞く。
その理由は、福利厚生にある。社宅や企業型DC、食事補助などが充実していれば、年収が低くても可処分所得は高くなる。
逆に、年収が高くても、福利厚生がまったくない会社なら、税金や社会保険料で大きく削られてしまう。
転職・就職時のチェックポイント
会社を選ぶ際、年収だけでなく、以下の福利厚生をチェックすべきだ。
- 社宅・住宅補助:家賃補助の有無、補助率
- 企業型DC:制度の有無、拠出上限額、マッチング拠出の有無
- 食事補助:制度の有無、上限額、利用できる店舗
これらがあるかないかで、可処分所得は数十万円〜100万円以上変わる。
関連記事:年収が下がっても不安が減った理由|お金の見え方が変わった転職の話
私の結論:投資より先に、制度を全部取りに行く
私は現在、3つの福利厚生をフル活用している。そして、この判断は正しかったと確信している。
投資より確実
投資は、リターンが保証されていない。市場が下落すれば、元本割れすることもある。
一方、福利厚生は市場変動によるリスクがほぼない。使うだけで、確実に「得」が生まれる。しかも、利回りは普通の投資では考えられないほど高い。
だからこそ、投資より先に、制度を全部取りに行くべきだと思う。
福利厚生は「低リスクの資産形成」
私は投資を通じて資産を増やすことを目指しているが、それと同じくらい福利厚生を重視している。
なぜなら、福利厚生は市場変動リスクのない資産形成だからだ。
- 社宅で年60万円の得
- 企業型DCで年10万円の節税
- 食事補助で年4.5万円の得
これだけで、年間約75万円。10年続ければ750万円、20年なら1,500万円になる。
しかも、これは「元本割れ」のリスクがない。市場が暴落しても、福利厚生の価値は変わらない。
続けられることが最大の武器
投資でも節約でも、最も重要なのは「続けられること」だ。
福利厚生は、特別な努力を必要としない。ただ「使うだけ」で、自然に得が積み上がっていく。
私自身、社宅・企業型DC・食事補助を使い始めてから、生活が楽になったと実感している。無理なく、ストレスなく、資産形成ができている。
これが、福利厚生の最大の強みだ。
関連記事:20代から始める資産運用|FIREを目指す私の投資方針と実体験
まとめ
社宅・企業型DC・食事補助は、税制を使ったチート級の制度だ。利回りで考えると、普通の投資ではありえない水準のリターンが得られる。
- 社宅:利回り感覚では年300%前後相当(年間約60万円の得)
- 企業型DC:年20〜30%相当(年間約10万円の節税)
- 食事補助:年100%相当(年間約4.5万円の得)
3つを合わせると、年間約75万円以上の「得」が生まれる。これを給料で得ようとすると、額面で110万円以上の昇給が必要だ。
会社選びでは、「年収」だけでなく「福利厚生」を必ずチェックすべきだ。福利厚生の有無で、可処分所得は数十万円〜100万円以上変わる。
投資より先に、制度を全部取りに行く。福利厚生は「市場変動リスクのない資産形成」だ。続けられることが最大の武器であり、この積み重ねが長期的には大きな差を生む。
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免責事項
本記事は、私個人の体験と計算に基づいて執筆したものだ。福利厚生の内容や節税効果は、企業や個人の状況によって異なる。具体的な数値や制度の詳細については、勤務先の人事部や税理士に確認していただきたい。投資判断や制度利用の判断は、ご自身の責任で行っていただきたい。

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